- 2023/4/10(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com (We might ignore non-academic e-mail address).
白根 竹人(徳島大学)
Divisor class groups of double covers over projective spaces
複素射影平面上の2次被覆が与えられているとき,引き戻しが可約となる既約平面曲線の条件を与えよ,という問題を考える.この問題は2003年のArtalと徳永の平面曲線の埋込位相に関する研究より始まっている.彼らの研究では引き戻しの既約性を用いて平面曲線の補空間の基本群の違いを導いている.2016年の坂内の研究では,基本群を経由せずに,引き戻しの情報から埋込位相の違いを証明する手法が導入された.また,2017年の講演者の研究より,引き戻しの既約性は補空間の基本群によって定まらないことがわかり,冒頭の問題の重要性が認識されている.本講演では,2次被覆の因子類群を調べることによりこの問題にアプローチする.その成果として得られた一般次元の複素射影空間上の2次被覆の因子類群と分岐因子の関係を報告する.また,1961年のSchwarzenbergerの研究で導入された2次被覆を用いた階数2のベクトル束の構成との関係も紹介する予定である.
- 2023/4/17(Mon) 阪大オンライン代数幾何学セミナー(For more information please contact handai.agseminar@gmail.com) 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
荒井 勇人(東京大学)
Half-spherical twists on derived categories of coherent sheaves
代数多様体Xの連接層の導来圏D(X)の自己同値を構成する重要な手法のひとつが、SeidelとThomasにより導入された球面対象に沿った捻り関手である。これはホモロジー的ミラー対称性のもとで、シンプレクティック多様体上のLagrange球面に沿ったDehn捻りに対応する構成である。
本講演では代数多様体の平坦族について、全空間Xの導来圏D(X)上の捻り関手をファイバーX_0の導来圏の自己同値に「制限」できるという結果について紹介する。特にその具体例として楕円曲面と可約ファイバーの場合を考えることで、楕円曲面の自己同値群を穴あきトーラスの写像類群の言葉で記述できることを説明する。さらにこれらの具体例では、「制限」によって得られる導来圏の自己同値が実曲面上の弧(arc)に沿った半捻り(half twist)のミラー対称性による対応物であると考えられること、およびその対応を決定するためのアプローチについても紹介する予定である。
- 2023/4/17(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
橋本 義規(大阪公立大学)
非自明平坦線束に対する一様Hörmander評価
曲率が正である計量を持つ正則複素線束上のdbar作用素に関するHörmanderのL^2評価は複素幾何において非常に重要である.本講演では,平坦(曲率が0となる計量をもつ)かつ非自明な正則複素線束について一様に成立するdbar作用素のL^2評価を紹介する.この結果のポイントは,線束が自明なものに近づくにつれてL^2評価の定数が爆発する様子を定量的に評価できることであり,これは上田の補題と呼ばれる結果の別証明も与える.証明では,第一チャーン類が消える複素線束は位相的に自明であること,またそのような位相的自明化の下でdbar作用素がどのように変形されるかをPicard多様体の座標を用いて具体的に書き下すことが重要なステップとなる.このように定められる「摂動dbar作用素」について,時間が許す限り詳細に説明する予定である.この講演は小池貴之氏との共同研究に基づく.
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/4/18(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404
髙野 凌史(大阪大学)
A partial rough path space for rough volatility
ラフボラティリティモデルとは,金融資産価格モデルの一種である.本講演では,ある種のラフボラティリティモデルの解析に適したラフパス理論の変種を扱う.さらに応用として,ラフボラティリティモデルの経路空間上での大偏差原理を導く.本講演は大阪大学の深澤正彰氏との共同研究に基づく.
- 2023/4/19(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
松田 凌 (京都大学)
無限生成擬Fuchs b 群の構成と性質について
Riemann面RのTeichmüller空間T(R)とは, 位相曲面としてのRに定義できる複素構造全体を, 擬等角写像を標識として集めてきた空間である. T(R) は自然に位相を持ち, それ自身が複素多様体になることが知られている. そこで, 何らかの意味でのT(R) の境界を考えることは, R の複素構造の退化現象を捉えることになり, 重要かつ興味深い対象である. 本講演では, T(R) を有界正則二次微分のなす空間に埋め込んで得られる, Bers境界を扱う.
Bers, Maskitらは, R がCompactな場合, Bers境界には, R が位相的に退化することを示した. また, 同相なRiemann面は, 擬等角写像によって写り合うことを示した. このことは, 本来, 柔らかいはずの位相構造が複素構造を決定してしまうことを言っている. (この結果には, Compactなリーマン面から, たかだか有限個の点を除いた有限型Riemann面に対して, ほぼ同様のことが示されている.)
一方で, R が無限型(e.g.種数無限大など)である場合, R と同相ではあるが, 複素構造が退化してしまう現象が存在する場合が考えられる. それを擬Fuchs b群と呼ぶことにする. 擬Fucha b群の存在や具体的構成法は今まであまり考えてこられなかったようである. 本講演では, Teichmüller空間の定義や必要な性質について簡単に復習した後, 擬Fuchs b 群の構成と, それらが成すBers境界内の無限次元複素多様体の存在について解説する.
- 2023/4/21(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Pierre Debes(Univ. Lille 1)
Recent Progress around the Hilbert Property
Given an algebraic situation described by $n\geq 1$ variables and depending on $r\geq 1$ independent parameters, the Hilbert property makes it possible to specialize the parameters and preserve the structure of the situation. The classical application, in the situation of $n=1$ variables, goes back to Hilbert: it reduces the number-theoretic Inverse Galois Problem to the search of geometric Galois covers of the line defined over the rationals with a given automorphism group. After reviewing some basics, a first part of the talk will be devoted to recent progress in the inverse Galois context. Recent progress also concerns topics in the less classical situation of $n>1$ variables. We will discuss some of them: a polynomial version of the number-theoretic Schinzel Hypothesis, an arithmetic Bertini theorem, etc. The talk will be intended for a wide audience.
- 2023/4/21(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
西谷 達雄(大阪大学 名誉教授)
対角行列による対称化とIvriiの(初期値問題に関する)予想への応用
p(y) をm次実多項式とし微分方程式 p(D)u=f を標準的な方法で 1
階の系 DU=AU+F に帰着させるとき p と p' (p の導関数) のBezout 行列 S は A
を対称化する.p(y)=0 の根がすべて実なら S は非負定符号である.ここでさらに S
を直交行列 T で対角化することを考える.得られた対角行列は V=TU
を未知関数とする系の対称化行列である.この一見無意味にも思える操作が重複特性根をもつ双曲型方程式の取り扱いに有効であること(特に
m=3 のとき)について述べたい.
またこの考え方を適用して Ivrii
の「危点がすべて実効的双曲型なら初期値問題は任意の低階について C^{\infty}
空間で適切である」という予想のうちまだ未解決であった「本質的に 2
階方程式には帰着されない場合」の証明が得られることを概説する.
- 2023/4/24(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com (We might ignore non-academic e-mail address).
松本 圭峰(大阪大学 理学研究科)
非可換p-進Hodge理論について
Bhatt-Morrow-Scholze は位相的Hochschild homology理論を用いて, 滑らか固有な多様体に対してBreuil–Kisin加群を値にもつ Breuil–Kisin コホモロジー理論を構成し,様々なp-進コホモロジー理論との間の整係数での比較定理を証明しました.
一方で,ミラー対称性やKontsevichの非可換L関数の構想,そして非可換代数多様体の高さ関数等をモチベーションに私は1年前に非可換代数多様体のp-進Hodge理論(非可換p-進Hodge理論)の存在を予想しました.
この非可換p-進Hodge理論は,非可換代数多様体のK(1)-局所K理論と位相的周期ホモロジー理論のB_{cry}-係数での比較を主張するもので,可換な代数多様体に対してはクリスタリン比較定理から直接証明することが出来ます.本講演では,非可換代数多様体に対してK-理論版のBreuil–Kisinコホモロジー理論を構築し,Bhatt-Morrow-Scholzeの比較定理の非可換版を証明します.
特に,K(1)-局所K理論が非可換代数多様体に対してKunneth公式を保つと仮定するとき,非可換代数多様体のK(1)-局所K理論と位相的周期ホモロジー理論がB_{cry}-係数での比較可能であること,及びK(1)-局所K理論から得られるp-進ガロア表現がsemi-stableであることを示します.
また,良い還元を持つ滑らか固有な代数多様体に対して,p-進エタールコホモロジー理論がsemi-stable表現であることの純K-理論的な別証明を与えます.
時間が許せば,Kelly-宮崎, 小泉-宮崎, Bindaらによって研究が進んでいるarbitrary base上の一般化されたモチーフ理論と,K理論版のp-進Hodge理論との関係についても話したいと考えています.
- 2023/4/24(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
濱中 翔太(三菱電機株式会社 先端技術総合研究所)
全スカラー曲率に対する極限定理
Gromovは,リーマン多様体上のスカラー曲率の下からのバウンドが計量のC^0級の収束の下で保たれることを示した.本講演では,その全スカラー曲率版に関する幾つかの結果を紹介する.ここで全スカラー曲率は、スカラー曲率を自然なリーマン体積測度で測ったものだけでなく,多様体上のある重み付きの測度で測ったものも考える.またこれと併せて,全スカラー曲率の上からのバウンドの保存性についても触れる予定である. この講演の内容はarXivプレプリント 2208.01865,及び 2301.05444 に基づく.
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/4/25(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
世良 透 (大阪大学)
間欠力学系の逆正弦法則に関連する大偏差評価
非一様拡大的で中立不動点(微分係数1の不動点)を持つ区間写像について,その反復作用による力学系を間欠力学系と呼ぶ.適当な初期分布の下で,間欠力学系は逆正弦法則などの様々な分布極限定理が成り立つことが知られている.そしてそれらの極限定理は一次元拡散過程に現れるものと類似している.本講演では間欠力学系の逆正弦法則に関連した大偏差評価について述べる.なおこの大偏差評価は指数関数的スケールではなく,べき乗スケールでの評価である.
- 2023/4/28(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
石垣 祐輔(大阪大学)
Asymptotic stability of stationary solutions to outflow problem for compressible viscoelastic system in one dimensional half space
本講演では圧縮性粘弾性流体の運動を記述する非線形偏微分方程式系を考える. 1次元半空間において, 流体が外部へ流出する状況を表す流出問題の定常解の存在・漸近安定性に関する結果を紹介する. 定常解が存在する条件を, Mach数と弾性波の伝播速度と呼ばれる物理的なパラメータで特徴づけ, Kawashima-Nishibata-Zhu(2003)で得られた既存の結果を拡張するとともに,通常の圧縮性粘性流体にない弾性力の反作用による流出への影響を明らかにする. 次いで,物理的なパラメータの適切な仮定のもとで, エネルギー法を中心とした定常解の漸近安定性の証明方法を解説する. 本講演の内容は神戸大学の上田好寛氏との共同研究に基づく.
- 2023/5/8(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com (We might ignore non-academic e-mail address).
井上 瑛二(理研 iTHEMS)
代数多様体の最適退化とトーリックμエントロピー
近年、代数多様体の標準ケーラー計量の存在と関連して導入されたK安定性という概念が代数幾何的な側面から盛んに研究されており、いまやその名はよく知られていることと思う。本講演では標準計量を持たないK不安定な代数多様体に対する最適退化の存在問題を取り上げ、専門的な知識をほとんど要求せず感覚を掴みやすいトーリック多様体の場合にフォーカスして説明する。
- 2023/5/8(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
藤谷 恭明 (大阪大学 理学研究科)
Analysis of harmonic functions under lower bounds of $N$-weighted Ricci curvature with $\varepsilon$-range
Ricci curvatureが下に有界なもとでのRiemann多様体上の調和関数の振る舞いは、解析学、幾何学的な観点から研究されてきた。例えば、Ricci curvatureの下からの有界性のもとで様々なLiouville型定理が得られている。本セミナーでは、重み付きRiemann多様体上の調和関数の勾配評価と、sublinear growthな調和関数のLiouville型定理を$N < 0$についての$N$-weighted Ricci curvatureが下に有界なもとで示す。本結果は、$\varepsilon$-range付き$N$-weighted Ricci curvatureの下限条件のもとでのMoser's iteration procedureを用いて得られるものである。また時間が許せば、$L^p$-Liouville型定理についても言及する。 本セミナーの内容はarXiv preprint arXiv:2303.14607に基づく。
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- 2023/5/12(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
Viviana Grasselli(Institut de Mahtématiques de Toulouse)
High frequency uniform resolvent estimates for the magnetic Laplacian
We consider the magnetic Laplacian on non compact Riemannian manifolds which have ends of infinite volume, including for example asymptotically conical or hyperoblic manifolds. We will show how we can obtain uniform estimates for the resolvent of this operator when the spectral parameter tends to the positive real line (i.e. for the so called limiting resolvent). This estimates hold in spaces with optimal weights and imply boundedness of the limiting resolvent in L^2 spaces with weights decaying faster than the inverse square root. In particular in this talk we will show how we can generalise a work by Cardoso and Vodev ('02) when adding lower order perturbations and considering optimal weights.
- 2023/5/15(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com (We might ignore non-academic e-mail address).
軽部 友裕(東京大学)
Stability conditions on degenerated elliptic curves
Bridgeland安定性条件とはスロープ安定性の三角圏への一般化であり、Bridgelandにより導入された。
安定性条件全体の集合には位相が入り、複素多様体になることが知られている。
ミラー対称性の観点から研究されている。他にも、この空間には導来同値群からの作用があるためその作用や空間のトポロジーを見ることで、導来同値群の構造の理解が進むと期待されている。
K3曲面やKlein特異点の解消などの例で、導来同値群の部分群が安定性条件の空間のデッキ変換群になることが示されている。
今回は可約な退化した楕円曲線について、その類似が成り立つことを紹介する。
その証明の過程で重要な導来同値についても紹介したい。
- 2023/5/15(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
佐野 太郎(神戸大学)
KählerでないCalabi-Yau多様体の対数変形による構成
射影的Calabi-Yau多様体は代数多様体の分類において重要な対象であり、その位相型が有限個かどうかは3次元以上では知られていない。
射影的という仮定を外しKählerでないCalabi-Yau多様体まで考えると、3次元では無限個の位相型がすでにClemens、Friedmanらによって1980年代に構成されていた。
それらの例は第2Betti数が低い例であったが、講演者らの研究により第2Betti数がいくらでも高い例が構成できることが任意次元でわかったので、本講演ではそれを紹介する。
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/5/16(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
山戸 康祐(筑波大学)
Existence of quasi-stationary distributions for downward skip-free Markov chains
I talk about existence of a quasi-stationary distribution for downward skip-free continuous-time Markov chains on non-negative integers killed at zero. The scale function for these processes is introduced and the boundary is classified by a certain integrability condition on the scale function, which gives an extension of Feller's classification of the boundary for birth-and-death processes. The existence and the set of quasi-stationary distributions are characterized by the scale function and the new classification of the boundary.
- 2023/5/17(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
丸山 修平(中央大学)
A crossed homomorphism on a big mapping class group
有限型でない曲面の写像類群をbig mapping class groupという. 2021年にCalegariとChenにより, 球面からカントール集合を除いた曲面の写像類群の2次(コ)ホモロジーが決定された. また彼らは, この写像類群のコホモロジーに関連する問題を2つ挙げている. その問題の片方は, 上記写像類群上のcrossed homomorphismに関するものである.
本講演では, CalegariとChenの問へのひとつの解答として, 円周への群作用とポアンカレの回転数を用いたcrossed homomorphismの構成法を紹介する.
- 2023/5/19(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Wee Teck Gan(National University of Singapore)
The local Langlands correspondence for $G_2$
We construct and characterize a local Langlands correspondence for the exceptional group $G_2$. Some tools used in this construction are the exceptional theta correspondence and triality. This is joint work with Gordan Savin.
- 2023/5/19(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
佐川 侑司(熊本大学)
調和ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式に対する小さな初期値の有限時間爆発解
本講演では調和ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式の小さな初期値の有限時間爆発解の構成について議論する.
この構成には負の時刻における解の減衰と正の有限時刻における解の爆発の議論を同時に行う.
調和ポテンシャルがない非線形シュレディンガー方程式の小さな初期値の有限時間爆発解の構成では藤田指数の制限がつくことが知られているが、調和ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式では藤田指数の制限がなく, H^1-subcriticalで有限時間爆発解の構成ができる.
本講演は佐藤拓也氏(熊本大学)と川上翔太氏(理研)との共同研究に基づく.
- 2023/5/22(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
金城 翼(京都大学)
Microlocal techniques in enumerative geometry
この講演では超局所層理論のアイデアの数え上げ幾何学の応用について議論する。Joyceらによって導入されたDonaldson—Thomas偏屈層を用いることでArinkin—Gaitsgoryによる連接層の特異台の概念の脱圏化を導入し、応用として仮想基本類の新しい構成法を与える。また、時間が許せば超局所層理論のテクニックのコホモロジー的Hall代数への応用についても議論する予定である。
- 2023/5/22(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
宮地 晶彦(東京女子大学現代教養学部)
S_{0,0}クラスの多重線形擬微分作用素について
S_{1,0}と名付けられたクラスのシンボルを持つ擬微分作用素は、例えばユークリッド空間を2進分割するなど、Calderon-Zygmundの特異積分の方法を使って扱うことができる。一方、S_{0,0}というシンボルのクラスの擬微分作用素は、関数f(x)の変数xとフーリエ変換の変数\xiの両方に関する平行移動を同等に扱うなど、Calderon-Zygmundの方法とは別の方法が必要である。その方法の基礎的な部分は現在、関数のGabor級数展開とそれに基づくmodulation空間と呼ばれる関数空間としてまとめられている。談話会では、modulation空間に類似した関数空間を利用して多重線形の擬微分作用素の有界性を調べた、加藤氏冨田氏との最近の共同研究などを紹介したい。23日からの集中講義では、Gabor級数展開とmodulation空間の理論を、初歩から丁寧に解説したい。
- 2023/5/29(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
永野 中行(金沢大学)
K3曲面の周期,テータ関数と複素鏡映群について
K3曲面は楕円曲線の複素2次元への拡張です。講演者は今までの研究で、K3曲面の周期写像を用いてモジュラー形式という整数論で重要な関数を明示的に構成していますが、このようなモジュラー形式がテータ関数と複素鏡映群の不変式で明示的に記述される事例を幾つか確認しました。
さて、ルート系、特異点の変形、実鏡映群の不変式が一体となった理論はE.Brieskorn 氏,斎藤恭司氏,B.Dubrovin 氏らによって発見・構成されています。これらの理論と、今回紹介する結果は、動機・手法は大きく異なるにもかかわらず、見かけ上似た曲面を扱うことになります。
今回の講演では、階数5の例外型複素鏡映群の場合を詳しく説明する予定です。余裕に応じて、古典的に知られたKummer 曲面との関係についても言及します。発表内容の一部は志賀弘典氏(千葉大)との共同研究結果に基づきます。
- 2023/5/29(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
Ya GAO(Hubei University・大阪大学理学研究科)
Prescribed (k,l)-Weingarten Curvature Problems in Lorentz-Minkowski Space
The study of prescribed curvature problem is a hot and important topic in Geometric Analysis, which denote to confirming the existence (and maybe the possible uniqueness) or non-existence of submanifolds with curvature equaling some prescribed function and with (if exists) some given boundary condition. We consider more general prescribed (k,l)-Weingarten curvature equation with Dirichlet boundary condition in Lorentz-Minkowski space, and under suitable settings, we can obtain the existence and uniqueness of solution.
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/5/29(Mon) 談話会 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
中村 誠(大阪大学情報科学研究科)
Global solutions of Klein-Gordon equation under the quartic potential in the de Sitter spacetime
The Cauchy problem for the Klein-Gordon equation under the quartic potential is considered in the de Sitter spacetime. The existence of global solutions for small rough initial data is shown based on the mechanism of the spontaneous symmetry breaking for the small positive Hubble constant. The effects of the spatial expansion and contraction on the problem are considered.
- 2023/5/30(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
濱口 雄史(大阪大学)
Markovian lifting and asymptotic log-Harnack inequality for stochastic Volterra integral equations
確率Volterra積分方程式(SVIE)の解は非マルコフ・非セミマルチンゲールであることから、通常の伊藤解析は直接は適用できない。本講演では、SVIEの「無限次元マルコフ過程への持ち上げ(リフト)」の新たな枠組みを導入し、ある種の確率偏微分方程式との同値性、および対応するマルコフ半群の性質について論じる。特に、SVIEのリフトに関する漸近的対数Harnack不等式 (asymptotic log-Harnack inequality)と、そこから導かれるマルコフ半群の漸近的性質について得られた結果を紹介する。
- 2023/6/2(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
牛越 惠理佳(横浜国立大学/大阪大学)
時間依存領域における大きな境界値に対するナビエ・ストークス方程式の時間周期解の存在について
本講演では,時間依存領域におけるナビエ・ストークス方程式の弱解の時間周期解の存在について言及する.
時間依存領域における同方程式の境界値問題は,森本(1971),井上-脇本(1977),宮川-寺本(1982),近年ではFarwig-津田(2022)など数多くの研究がある.一方,時間周期解の研究についても,Serrin(1959),Yudovic(1960),Kaniel-Shinbrot(1967)を始めとして大変多くの研究がある.
時間周期解の存在を保証する為には,対流項の制御が重要になるるが,これに対して,宮川-寺本(1982)では境界値の勾配のL^2ノルムの大きさに制限を加えることにより時間周期解の存在に言及していた.本講演では,宮川-寺本(1982)の条件を緩和することを目標とする.その際,小薗-柳澤(2009)で用いられたHelmholtz-Weyl分解の領域依存性を解析することが重要となる.
なお本講演は,大阪大学の岡部考宏氏,横浜国立大学卒の菅野晴瑠氏との共同研究に基づく.
- 2023/6/5(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
金光 秋博(埼玉大学)
K3 surfaces of genus 13 and curves of genus 3
種数3の超楕円曲線上の奇数次数かつ階数が2である安定束のモジュライNは, グラスマン多様体Gr(8,2)内において, 8変数二次形式のペンシルPの零点集合Gr(8,2,P)として得られる (Desale-Ramanan).
このモジュライN上のベクトル束に関する完全交差多様体として, 種数13のK3曲面(S,h)の記述を与え, またその一般化についても紹介する (向井茂氏との共同研究).
- 2023/6/9(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
田坂 浩二(愛知県立大学)
D4格子に関する球面デザインおよびモジュラー形式
講演では,モジュラー形式の理論を格子のシェルの球面デザイン問題に応用したVenkov (1985)らのアイデアや,Ramanujanタウ関数についてのLehmer予想との関係などから始め,彼らの仕事をさらに深める形で得られたD4格子に関する結果を述べる.時間が許す限り,D4ルート系のデザインとしての一意性,調和多項式へのHekce作用素といった関連話題に>も触れる.これは野崎寛氏(愛知教育大学)および平尾将剛氏(愛知県立大学)との共同研究である.
- 2023/6/9(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
木下 真也 (東京工業大学)
Pointwise convergence for orthonormal systems
自由 Schrödinger 方程式の解のほぼすべての点における収束問題は Carleson の問題と呼ばれ, 調和解析において重要な問題として知られている. 1980年の Carleson の問題提起以降多くの研究成果が得られ, 最近の Bourgain (2016), Du-Guth-Li (2017), Du-Zhang (2019) らの結果により Carleson の問題は端点を除き解明された. 本講演では, von Neumann-Schrödinger 方程式と呼ばれる, 無限個のフェルミオン粒子の運動と関連する方程式の, 解の密度関数に関する各点収束問題について考える. Carleson の問題が一つの粒子に対する各点収束問題とすると, 本講演で取り扱う問題は, 無限個の粒子に対する各点収束問題とみなすことができる. 本講演は Neal Bez氏 (埼玉大学), 白木 尚武氏 (Institute Superior Técnico) との共同研究に基づく.
- 2023/6/12(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
Linghu Fan (IPMU)
Construction of crepant resolutions of quotient singularities in positive characteristic
Crepant resolutions appear as an important role in research of McKay correspondence; as a famous and concise example, Batyrev proved that for G, a finite subgroup of SL(n,C), if C^n/G has a crepant resolution Y, then the topological Euler number of Y equals the number of conjugacy classes of G. In positive characteristic, few constructions of crepant resolutions are known and there are counterexamples to Batyrev’s theorem.
In this talk, I will introduce several constructions of crepant resolutions in positive characteristic, including a new counterexample to Batyrev’s theorem. In this counterexample, the quotient singularity is given by a group with more complicated modular representations, compared to known examples. If time allows, I will give a representation-theoretic viewpoint to see examples mentioned in the talk in addition.
- 2023/6/12(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
瀬片 純市(九州大学大学院数理学研究院)
非線形分散型方程式系の長距離散乱について
本講演では, 非線形分散型方程式系の長距離散乱について考える.
方程式がスカラーの場合の長距離散乱については1990年代以降研究され, 今ではさまざまな手法が開発されている. 本講演では長距離散乱理論の, システムの場合, 及び方程式に線形ポテンシャルがついた場合への拡張を考え, これらの方程式の長距離散乱に対する最近の進展について触れる.
- 2023/6/13(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
綾 朝弘(京都大学)
Quantitative stochastic homogenization of elliptic equations with unbounded coefficients
確率的均質化の分野において,解の収束を定量的に評価する研究が近年盛んに行われている.しかし従来の研究の対象は方程式のランダム係数が一様に有界である標本空間であり,非有界な係数を含む方程式での確率的均質化の定量的な結果は少ない.本講演ではsubadditive argument を非有界係数の場合に拡張することにより非有界な係数を含む楕円型PDEの解の収束の速さを評価する.
- 2023/6/16(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
瀬片 純市(九州大学)
非線形シュレディンガー方程式系の解の長時間挙動について
本講演では1次元で3次の非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式系の解の長時間挙動について考える. この方程式系は未知変数の線形変換に関して閉じており, 方程式系の間に自然に同値関係が導入される. よって, 方程式系の集合をこの同値関係で割った商集合を考えることができるが, 本講演ではこの商集合の特徴づけに関する結果を紹介する. この結果の応用として, スカラーの場合になかった新しいタイプの解挙動をもつシステムを見つけることが出来たが, 時間があればこれらについても触れたい. 本講演は眞崎 聡 氏 (北海道大学), 瓜屋 航太 氏 (岡山理科大学)との共同研究に基づく.
- 2023/6/19(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
谷口正樹(京都大学)
随伴不等式と4次元トポロジー
4次元多様体論において, 滑らかに埋め込まれた曲面の種数を下から評価する随伴不等式と呼ばれる不等式がある. 複素2次元射影平面に対する随伴不等式は, d次曲線の種数を求める随伴公式を不等式の形にしたもので, 現在ではsymplectic 4次元多様体に一般化されている. また, 随伴不等式は曲面の滑らかさを反映するものであり, 4次元多様体の微分構造の解明において大きな役割を担ってきた.
この随伴不等式の証明は, ゲージ理論やHeegaard Floer理論を用いる. この講演では, Seiberg-Wittenゲージ理論のhomotopy論的な側面を発展されることで, 随伴不等式を境界付き4次元多様体に滑らかに埋め込まれた境界付き曲面に対するものに一般化する. また, 先行研究との比較, そこから得られる幾つかの微分構造, symplectic cap/fillingへの応用を述べる.
この研究は, 飯田暢生氏, 今野北斗氏, Anubhav Mukherjee氏らとの共同研究を含む.
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/6/20(Tue) 大阪大学ミラー対称性セミナー 13:30--15:00 理学部 E412 セミナー室
大谷 拓己(大阪大学 理学研究科)
三角圏の安定性条件の空間とミラー対称性
ミラー対称性とは,symplectic幾何学と複素代数幾何学の間の対称性であり,物理学の超弦理論に起源をもつ.
数学におけるミラー対称性の定式化にはいくつか種類がある.
Frobenius多様体による定式化は古典的ミラー対称性,三角圏による定式化はホモロジー的ミラー対称性と呼ばれる.
これら2種類のミラー対称性は,三角圏の安定性条件によって結びつくことが期待されている.
安定性条件全体がなす空間は複素多様体になることが知られており,多様な観点と手法によってその構造が研究されている.
しかしながら,安定性条件やその全体空間の研究では,現在も基本的な課題が数多く残されている.
本講演では,これらの課題や問題意識についての解説を行う.
具体的には,以下の内容について説明する:
1. 復習(ミラー対称性の概要と三角圏の安定性条件)
2. 安定性条件の空間について期待される全体像や問題意識
- 2023/6/20(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
田口 大(関西大学)
Besov regularity of the density function for a class of SDEs with superlinearly growing coefficients and its application
In 2010, Fournier-Printems introduced a simple method for proving the existence of the density function of the time marginals of one-dimensional SDEs with linear growth coefficients. Debussche-Fournier (2013) and Romito (2018) extended this method to multi-dimensional case, and proved that the density function belongs to some Besov space. Their approach is based on "the one-step Euler scheme". On the other hand, Hutzenthalerm-Jentzen-Kloeden (2011) showed that if the coefficients of SDE grow super-linearly, then the standard Euler scheme does not converge to a solution of the equation. In order to approximate a solution of these SDEs, several "tamed Euler schemes" are proposed.
In this talk, inspired by these previous research, we prove the Besov regularity of the density function for a class of SDEs with superlinearly growing coefficients. Our approach is based on "the one-step tamed Euler scheme". As an application of the regularity of the density function, we consider numerical analysis for irregular functionals of these SDEs.
This talk is based on joint work with Tsukasa Moritoki (Okayama university).
- 2023/6/21(Wed) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)(注意:いつもとセミナーの曜日が異なります)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Tuesday(We might ignore non-academic e-mail address).
江尻 祥(大阪公立大学)
正標数の代数的ファイバー空間が持つ数値的小平次元について
飯高は代数的ファイバー空間の全空間、底空間および生成ファイバーについて小平次元が劣加法性を満たすと予想した。小平次元は双有理幾何学において重要な役割を果たす不変量である。中山は小平次元に“近い”不変量として数値的小平次元を導入した。それは小平次元に一致することが予想されている。中山はさらに数値的小平次元について飯高の予想に類似した不等式を証明した。この不等式は極少モデル理論の進展に大きく貢献してきた。
本講演では中山の不等式を正標数において扱い、成り立つための十分条件と反例を紹介する。十分性を示すために証明した、Popa--Schnellの大域生成定理とViehwegの弱正値性定理、藤野の大域生成定理のそれぞれの亜種についても説明する。
- 2023/6/21(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
石川元稀(立命館大学)
Lagrangeのコマに付随する楕円ファイバー空間とそのモノドロミーについて
Lagrangeのコマは固定点の周りで回転する剛体の力学系で、特に固定点と重心を通る軸に関して回転対称性を持つものを言う。数学的には3次元回転群とそのLie環の半直積群のLie環の双対空間上でLie-Poisson構造に関するHamilton系として記述される。この力学系は完全積分可能系の典型例のひとつである。第一積分(保存量)を並べて得られるモーメント写像は楕円曲線を一般ファイバーとするファイバー空間を誘導する。この楕円ファイバー空間について複素代数幾何的な観点から考察する。この講演ではこの楕円ファイバー空間について、特異跡の分析と特異ファイバーの分類に関する結果を述べる。またこの楕円ファイバー空間のモノドロミーがある程度決定されたので、その結果についても述べる。
- 2023/6/23(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
梶原 直人(岐阜大学)
Resolvent estimate for the heat equation in an infinite layer with various boundary conditions
本講演では, 層状領域で非斉次線形熱方程式を考える.
境界条件が上端, 下端の2つ必要であるが, いずれもDirichlet, Neumann, Robinを全て許し, 主結果はレゾルベント評価である.
部分Fourier変換によって, 偏微分方程式を常微分方程式の2点境界値問題に帰着させ, 解公式を得る.
さらに解公式を積分作用素を通し表現し, 適切な分解の後, Fourier-multiplier型定理により$L_q$有界性を得る.
レゾルベント評価のみでなく, 最大正則性評価も同様の流れで得ることもできる.
本研究は松井愛希氏との共同研究である.
- 2023/6/26(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
横山 俊一(東京都立大学大学院理学研究科)
計算機数論システムの開発とその展望
計算機数論システムとは、その名の通り数論全般、もしくはより広く多項式代数に纏わる対象物を計算機上に実現し、高速・効率的に解くためのソフトウェアのことである。
講演者はこれまでの15年間で、主に Magma, Sage, Pari/GP を用いて数論アルゴリズムの開発・改良・高速化に取り組んできた。
また近年では、高水準言語 Julia を用いた新しいプラットフォームにおける計算機数論システムの整備(の一部)に取り組んでいる。
本講演では、各システムとこれまでの成果物について五月雨式に紹介しつつ、完成に至るまでの困難・問題点とアイデアについて紹介する。
- 2023/6/27(Tue) 大阪大学ミラー対称性セミナー 13:30--15:00 理学部 E412 セミナー室
松本 圭峰(大阪大学 理学研究科)
幾何学的不変量が圏論的不変量であるか否かという問題について
「L関数が圏論的不変量として構成できるか否か」という問題は,黒川先生やKontsevichらによって取り上げられてきました.
近年,この問題はHodge数の導来不変性予想と密接に関係する重要な問題で,ミラー対称性の分野でも興味深い研究対象です.
本講演では,この問題の重要性をミラー対称性やモチーフ理論との関係から説明します.
また関連するいくつかのトピック(圏論的エントロピーゼータ関数,非可換モチーフ,dg圏のL関数)についても解説をしようと思います.
- 2023/6/28(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
高橋悠樹(埼玉大学)
Invariant measures for iterated function systems with inverses
We consider iterated function systems that contain inverses in the overlapping case. Under the transversality condition, we show that the invariant measure is absolutely continuous for a.e. parameter when the random walk entropy is greater than the Lyapunov exponent. We also show that if the random walk entropy does not exceed the Lyapunov exponent, then their ratio gives the Hausdorff dimension of the invariant measure for a.e. parameter value
- 2023/6/30(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
渡邉 南(津田塾大学)
Recent results on threshold solutions for the double power nonlinear Schrodinger equations
本講演では,二重べきの非線形シュレディンガー方程式(NLS)の解の大域挙動を扱う.分散型方程式に分類されるNLSは,方程式の線型性と非線形性の競合によって,典型的な3つの解である散乱解,爆発解,そして定在波解に分類される.特に基底状態と初期値の作用汎関数が一致する場合において,初期値によって解がどのように分類されるかについて得られた結果を述べる.本研究は菊池弘明氏(津田塾大学)と浜野大氏(早稲田大学)との共同研究である.
- 2023/7/3(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
高松 哲平(京都大学理学研究科/白眉センター)
準-F-分裂の判定法について
正標数の代数幾何学において、F-分裂とよばれるFrobenius写像を用いて定義される特異点は、重要な役割を果たしてきた。
呼子笛太郎氏は、F-分裂の一般化・定量化である準-F-分裂・F-分裂高さを導入し、Calabi-Yau多様体の場合にF-分裂高さがArtin-Mazur高さと一致することを証明した。
本講演では、準-F-分裂の判定・F-分裂高さの計算のためのいくつかの方法と、その応用について紹介する。本講演は河上龍郎氏、田中公氏、Jakub Witaszek氏、呼子笛太郎氏、吉川翔氏との共同研究にもとづく。
- 2023/7/3(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
奥田 隆幸(広島大学)
粗幾何学と小林固有性判定定理
局所コンパクト群 $G$ とその閉部分群 $H$ を固定し, 等質空間 $X = G/H$について考えたい. ただし以下では $H$ が非コンパクトである場合を主に想定する.
$G$ の離散部分群 $\Gamma$ であって, 等質空間 $X = G/H$ への自然な作用が固有不連続かつ固定点自由になるようなものを $X$ の不連続群とよぶ.
特に $G$ がLie群である場合には, $X$ 上の不連続群の研究は $(G,X)$-多様体の研究の一種とみなすことができ, 微分幾何学の重要な研究テーマの一つとなっている.
一般に $G$ の(離散とは限らない)閉部分群 $L$ であって, $X = G/H$ への自然な作用が固有であるようなものを考えると, このような $L$ の torsion-free な離散部分群は必ず $X$ の不連続群となるため, 不連続群の構成に役に立つ.
そこで以下のような問題が研究テーマとして成立する:
問A: $G$ の閉部分群 $L$ であって, $X = G/H$ への自然な作用が固有であるようなものをいろいろ構成せよ.
この問における本質的な困難さの一つとして, $H$ が非コンパクトの場合には, 一般には以下の問Bが簡単ではないということが挙げられる:
問B: $G$ の閉部分群 $L$ が与えられたとき, $L$ の $X = G/H$ への作用が固有であるか判定せよ.
問 B に関する最も重要な結果の一つは, $G$ が実簡約リー群の場合についての, 小林俊行氏による固有性判定定理 ([Math. Ann. '89, J. Lie Theory '96]) である.
これは簡約群 $G$ の $KAK$ 分解を利用して, 可換群 $A$ の部分だけに着目して $X$ 上の $L$ 作用の固有性が判定できるというものである.
現在ではこの固有性判定定理は実簡約群 $G$ の等質空間 $X = G/H$ 上の不連続群の研究における基本的な道具となっており, 多くの応用がなされている.
本講演では小林氏の固有性判定定理の, 粗幾何学の視点による一般化について紹介する.
またその応用として, $G$ がアファイン群で, 等質空間 $X = G/H$ が有限次元実ベクトル空間である場合を考え, $G$ の閉部分群 $L$ の $X$ への作用についての固有性判定定理を紹介する.
本講演の内容は小川健翔氏(広島大), 長屋拓暁氏(広島大)との共同研究に基づく.
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/7/3(Mon) 幾何セミナー 15:30--16:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Ettore Minguzzi(University of Florence)
Lorentzian metric spaces and their Gromov-Hausdorff convergence
A definition for `bounded Lorentzian metric space' is presented and discussed. This is an abstract notion of Lorentzian metric space that is sufficiently general to comprise compact causally convex subsets of globally hyperbolic (smooth) spacetimes, and causets. It is shown that a generalization of the Gromov-Hausdorff distance and convergence can be applied to these spaces. Furthermore, two additional axioms of timelike connectedness and existence of maximizers, which are stable under GH-convergence, lead to suitable notions of Lorentzian pre-length and length spaces. Similarly, sectional curvature bounds stable under GH-convergence can be introduced. A (pre)compactness theorem is also mentioned and its limitations are discussed. Talk based on joint work with Stefan Suhr (Bochum).
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/7/4(Tue) 大阪大学ミラー対称性セミナー 13:30--15:00 E412 セミナー室
三浦 真人(大阪大学 理学研究科)
Calabi--Yau多様体の風景
複素 3 次元 Calabi--Yau 多様体には、たくさんの位相型が存在しており、それらが有界であるか否かは重要な未解決問題である。
さらに、これらの Calabi--Yau 多様体は、双有理同値、導来同値、幾何転移、ミラー対称性などで複雑に関係しあっている。
本講演では、位相不変量のデータベースを参考にしながら、既知の Calabi--Yau多様体の全体像を見渡すとともに、これらの関係についての入門的な解説を行う。
また、もっとも基本的な Calabi--Yau 多様体の例である quintic 3-fold をはじめ、少数の特徴的な具体例を取り上げ、その位置付けを紹介する。
とくに、非自明な Fourier--Mukai パートナーを持つ Calabi--Yau 多様体に焦点を当て、この分野における問題意識を共有したい。
- 2023/7/7(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
臺信直人(慶應義塾大学)
楕円曲線の等分体のイデアル類群について
有理数体$\mathbb{Q}$上の楕円曲線$E$と素数$p$に対し, $E$の$p$等分体は, $\mathbb{Q}$に$E$の$p$等分点全てを添加して定まる代数体である. 等分体は円分体の類似物であり, PrasadやShekharらによって, 円分体のイデアル類群に関するHerbrand-Ribetの結果の, 等分体に対する類似が研究されている. 講演者は, $p$で局所的に$p$可除な$E$の有理点を用いて, $E$の$p$等分体のイデアル類群をGalois加群として考察した. 本講演では, この考察の結果得られた, イデアル類群のある``既約成分''の重複度の下界に関する結果を紹介する. また, この結果がPrasad-Shekharの結果を含む, いくつかの先行研究の部分的な改善を与えることも説明する.
- 2023/7/10(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
柴田 崇広(水産大学校)
On finite quotients of abelian varieties
偏極自己射を持つ射影多様体の典型としてアーベル多様体が考えられる.また,アーベル多様体の有限商(アーベル多様体の任意の有限群作用による商)も偏極自己射を持つ射影多様体となっており,さらにQ-アーベル多様体(標準束がQ-linearly trivialなアーベル多様体の有限商)はquasi-etaleな偏極自己射を持つ射影多様体として特徴づけられる.
この講演ではアーベル多様体の有限商の構造についてお話したい.特に,アーベル多様体の有限商はQ-アーベル多様体とQ-Fanoなアーベル多様体の有限商から構成されることを説明する.
- 2023/7/10(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
青井顕宏(和歌山工業高等専門学校)
A conical approximation of constant scalar curvature Kähler metrics of Poincaré type and log K-semistability
The existence of constant scalar curvature Kähler (cscK) metrics is an important problem in complex geometry.
In this talk, I will explain that a cscK metric of Poincaré type on the complement of a smooth divisor can be approximated by cscK metrics with cone singularities.
This result is an analogue of Guenancia’s result for cscK metrics.
As a corollary, we obtain log K-semistability with angle 0.
This corollary is related to conjectures of Székelyhidi and J. Sun-S. Sun.
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/7/10(Mon) 談話会 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
松本 佳彦(大阪大学 理学研究科)
放物型幾何のバルク・境界対応にむけて
講演の前半では、「Cartan幾何」の概念を用いたさまざまな幾何構造の統一的記述について説明します。後半では、Cartan幾何の中で特別なクラスをなす「放物型幾何」を別の空間の無限遠境界と捉える見方について、自身の結果をいくつか交えて紹介します。とくに放物型幾何の退化現象に触れたいと思います。
- 2023/7/11(Tue) 大阪大学ミラー対称性セミナー 13:30--15:00 E412セミナー室
大谷 拓己(大阪大学 理学研究科)
三角圏の安定性条件の空間とミラー対称性 Part 2
三角圏上の安定性条件全体がなす空間は,複素多様体の構造を持つことが知られている.
ミラー対称性の哲学に基づくと,特異点が定める導来深谷圏上の安定性条件の空間は,特異点の普遍変形パラメータの空間と同一視できると予想されている.
本講演では,ADE型特異点(及びaffine ADE型多項式)のミラー対称性を中心に,この予想の背景と課題について解説する.
また,この予想に関連した,安定性条件の空間から得られる導来不変量や期待される構造についても紹介する予定である.
- 2023/7/11(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
塩沢 裕一(大阪大学)
Hausdorff dimensions of inverse images and collision time sets for symmetric Markov processes
本講演内容は Jian Wang 氏 (Fujian Normal University) との
共同研究 (arXiv:2304.09417) に基づく。
本講演では、距離空間上のあるクラスの対称マルコフ過程に対して、
逆像(定められた集合への滞在時刻全体の集合)
および衝突時刻全体の集合のハウスドルフ次元を決定する。
証明の方針は、安定従属過程を用いた Hawkes の手法および、
直積過程を用いた Jain-Pruitt の手法を発展させるとともに、
熱核評価に基づいた解析を行うことである。
今回得られた結果は $d$ 集合上の対称拡散過程や対称安定型過程に適用可能である。
- 2023/7/14(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
石田 祥子(千葉大学)
空間N次元における退化型癌浸潤モデルに対する大域可解性と有界性
退化型拡散項をもつ間接型癌浸潤モデル(P)について考察する。以下、Nを空間次元、mを拡散の強さ、αを凝集の強さとする。
問題(P)に対するはじめての結果として、空間3次元以下のときFujie-I.-Ito-Yokota (2018)はm>1, α=1の場合の大域解の存在と有界性を報告している。この結果ではランダム拡散モデルについて考察しているが、退化型拡散モデルにも適用できることを注意する。空間N次元のとき、Jin-Liu-Shi (2018)は、条件α<m+1+1/N (N≦3), α<m+4/N (N≧4)における非退化型モデルの大域可解性と解の有界性を示した。証明方法はケラー・シーゲル系を扱ったTao-Winkler (2012)に基づいている。一方でα≧m+4/Nの場合はJin-Liu-Shi (2018)で注意されているように何も分かっていない。
本講演ではα=m+4/Nの場合に焦点を置き、(P)に対する解の大域有界性について考えていく。なお、本講演は横田智巳氏(東京理科大)との共同研究の結果に基づく。
- 2023/7/24(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
呼子 笛太郎(名古屋大学)
準F-分裂について
F-分裂性は正標数の可換環論やシューベルト多様体の研究から生まれたものであり,近年は双有理幾何学との関連からも積極的に研究されてきた.
準F-分裂性はF-分裂性を,幾分数論的な方向に拡張した概念である.この講演では,この概念についての最近の結果について,Hodge-Witt性との類似性などを解説する.
講演内容は河上龍郎氏、高松哲平氏,田中公氏、Jakub Witaszek氏、吉川翔氏との共同研究を含む.
- 2023/7/24(Mon) 談話会 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
菊田 康平(大阪大学 理学研究科)
K3曲面の自己同型群のacylindrical hyperbolicity
「K3曲面の導来圏の自己同値群」は純粋に群論における研究対象として非常に興味深い.本談話会では,この自己同値群の部分群で,より古くから研究されてきた自己同型群の幾何群論的な側面を紹介する.幾何群論は群を調べる際に強力な手法を提供するが,代数多様体の自己同型群に対してはほとんど考察されてこなかった.2019年にKurnosov-YasinskyはK3曲面の自己同型群がCAT(0)群となることを示した.この結果をもとに,より詳細なalternative(自己同型群はvirtually abelianかacylindrically hyperbolicのいずれかである)が成り立つことを見る.
- 2023/7/28(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
津原 駿(東北大学)
非線形Neumann境界条件を伴う2次元半空間上のSchrödinger方程式の初期値境界値問題
本発表では, 2次元半空間上で非線形Neumann境界条件を課したSchrödinger方程式の初期値境界値問題を考察する. 1次元半直線においては, Batal-Özsari, Hayashi-Ogawa-Satoらが, 同様の問題の適切性について考察している. ここでは, 非斉次Neumann境界項に対する境界Strichartz型評価を2次元半空間上で示し, 非線形問題へ適用する. 特に, 冪乗型非線形項を伴う初期値境界値問題が, $L^2$劣臨界または$L^2$臨界となる場合に時間局所適切となることを証明する. 本発表は, 小川卓克氏(東北大学), 佐藤拓也氏(熊本大学)との共同研究に基づく.
- 2023/7/31(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
Di, Wu(南京理工大学(Nanjing University of Science and Technology))
Harmonic metrics and Higgs bundles
The harmonic metric emerges a canonical metric on vector bundles, this talk will introduce our recent results on existence criteria for harmonic metrics. Furthermore, we also discuss its applications on Higgs bundles on noncompact Kahler manifolds and compact Sasakian manifolds.
***セミナー室に来られない聴講希望者のためにオンラインでのセミナー映像のリアルタイム配信を企画しております. Zoomのリンクは講演一週間前までに幾何学メーリスでお知らせいたします. 幾何学メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/8/4(Fri) 大阪大学ミラー対称性セミナー 13:30--15:00 E412 セミナー室
厚東 裕紀(京都大学)
ファイバー束の量子コホモロジー
複素数体上の非特異射影代数多様体のGromov-Witten不変量は点付き曲線の数え上げに対応する不変量であり,曲線の種数や点の個数を定める毎に決まる.
ミラー対称性の文脈ではGromov-Witten理論はA模型に対応しており,種数0のGromov-Witten不変量を集めることで量子コホモロジー(D加群)と呼ばれるFrobenius多様体が構成できる.
ファイバー束のコホモロジーはその底空間およびファイバーのコホモロジーを用いて記述できるが,量子コホモロジーに対しても同様の現象を期待することは自然である.
本講演では,トーリック多様体をファイバーにもつファイバー束の量子D加群と底空間・ファイバーの量子D加群がどのように関係しているかを解説する.
時間が許せば,各種の予想やミラー対称性との関係についても触れる予定である.
- 2023/8/7(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
谷山 公規(早稲田大学教育・総合科学学術院)
結び目・絡み目・空間グラフの結び目解消数と交点数の関係について
非自明結び目の結び目解消数の2倍はその結び目の交点数より小さいことが知られています。平面に埋め込み可能なグラフの空間埋め込みに関しても結び目解消数が定義されます。結び目・絡み目・空間グラフの結び目解消数と交点数の関係について考察します。
- 2023/8/8(Tue) 大阪大学ミラー対称性セミナー 13:30--15:00 E412 セミナー室
真鍋 征秀(大阪大学)
An Overview of Topological Recursion
Chekhov-Eynard-Orantinの位相的漸化式は,行列模型のレゾルベントの
多点関数(相関関数)の行列サイズN=∞周りの摂動展開の係数が従う三角方程式系であるが,
2007年以降,行列模型で実現できるとは限らない(が2次元量子重力とは関係する)
様々な理論に適用できることが示されてきた.
この摂動展開は2次元リーマン面(弦の世界面)の種数に対応する展開になっており,
三角方程式系はこの種数gとレゾルベントの数nに関する漸化式である(g,nは0以上の整数).
位相的漸化式は,(g,n)=(0,1)に対応する複素代数曲線(スペクトル曲線)と
(g,n)=(0,2)の情報から,原理的には全ての(g,n)の摂動展開係数を決定し,
3次元局所カラビ・ヤウ多様体を標的空間とする位相的B模型の
摂動的開弦/閉弦自由エネルギーを与えると理解することができる.
本講演では,位相的漸化式の導入的な解説とともに,それが現在まで
どのような理論に適用されてきたのかを具体例をあげつつ概観する.
- 2023/8/21(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Luigi Vezzoni(Università di Torino)
The quaternionic Calabi-Yau conjecture via a parabolic approach
The talk focuses on special metrics that are compatible with hypercomplex structures. In particular,
I will consider hyperKähler with torsion metrics (HKT) introduced by Howe and Papadopoulos in
1996. HKT manifolds represent the hypercomplex counterpart of Kähler manifolds in many ways, and
in this context balanced HKT metrics play the same role of Calabi-Yau metrics in Kähler geometry.
In 2010 Alesker and Verbitsky introduced a Calabi-Yau type problem in HKT geometry, stating a
conjecture that is still open. In the talk, I will present a parabolic approach for studying the conjecture via a geometric flow. This approach leads to a new proof of a Theorem of Dinew-Sroka about the solvability of the conjecture on hyperKähler manifolds.
- 2023/10/2(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
三浦 真人(大阪大学 理学研究科)
Toric Mori theory and minimal polytopes
極小多面体 (minimal polytope) とは、原点を内部に含む凸多面体であって、どの頂点を取り除いても残りの頂点の凸包が原点を内部に含まないものをいう。
Kreuzer と Skarke による反射的多面体の分類において、鍵となるアイデアの一つは、極小多面体と combined weight system (CWS) の対応を利用することであった。
本講演では、この組み合わせ論的な対応をトーリック森理論の観点から捉え直し、その幾何学的な意味を議論する。
また、彼らによる反射的多面体の分類手法についても、簡単に振り返る予定である。
- 2023/10/2(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Giovanni Placini(Università degli Studi di Cagliari)
Ricci curvature of canonical Kähler metrics (after Calabi)
A Kähler manifold admits a plethora of metrics. Exhibiting canonical Kähler metrics,, e.g. Kähler-Einstein, constant scalar curvature, etc., and studying their properties is a central problem in Kähler geometry.
In this talk, inspired by Calabi’s work, we define a large class of Kähler metrics which we call well-behaved.
We will discuss such metric and present several explicit examples and open problems.
Finally, we prove a property of well-behaved metrics extending some classical results on Kähler-Einstein metrics and present its consequences.
- 2023/10/3(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
林 晃平(理化学研究所)
Bernardin-Stoltzモデルに対する揺らぐ流体力学極限
Bernardin-Stoltzモデルは,1次元の格子上のHamilton系の一種であり,体積,エネルギーという二つの保存量を持つ.本研究では,これらの保存量に対する揺らぐ流体力学極限(fluctuating hydrodynamics)を考え,時空間に対するスケール極限を行うことでこれらの挙動のマクロな挙動を導出することが目的である.特に本講演では,系を駆動する非線形関数が調和ポテンシャルに漸近するような極限を考えると,Kardar-Parisi-Zhang方程式,および指数3/2の異常拡散方程式が導出されることを示す.本研究はPatr\’icia Gon\ccalves氏(Instituto Superior T\’ecnico)との共同研究に基づく.
- 2023/10/4(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:10--16:40 理学部 E404/406/408 大セミナー室
真鍋 征秀(大阪大学 理学研究科)
‘‘Hurwitz numbers, matrix models and enumerative geometry'' (Bouchard and Marino) の文献紹介
単純フルビッツ数は,コンパクトリーマン面から複素射影直線への写像について,
複素射影直線の1点では任意被覆,それ以外の点では単純被覆であるような
分岐被覆の数え上げを与え,安定曲線のモジュライ空間上のHodge積分としての
表式が知られている(Ekedahl-Lando-Shapiro-VainshteinによるELSV公式).
本セミナーでは,単純フルビッツ数がLambert曲線を入力データとした
Chekhov-Eynard-Orantinの位相的漸化式から得られることを主張した
2007年のBouchardとMarinoの仕事,及び
「フルビッツ数と位相的漸化式」に関連したその後の進展について紹介する.
- 2023/10/6(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Don Zagier(ICTP (Trieste, Italy) and SUSTech (Shenzhen, China))
Higher spherical polynomials and higher spherical functions
The classical theory of spherical harmonics and the related families of orthogonal polynomials (Legendre, Chebyshev, and Gegenbauer polynomials) goes back to the eighteenth century and is one of the most beautiful subjects
in mathematical physics and pure mathematics, with many applications. The talk will describe a far-reaching generalization, developed over the course of the last years in collaboration with Tomoyoshi Ibukiyama, in which the spherical harmonics are replaced by functions of n variables in a d-dimensional Euclidean space that are harmonic and homogeneous in each variable separately and are invariant under the diagonal action of the group O(d). (The classical theory corresponds to the case n=2.) This definition was originally motivated by an application to the theory of Siegel modular forms but turns out to lead to a very rich theory that is of interest in its own right, but that is also much more complicated than the classical one because the spaces of polynomials of fixed degree are now no longer one-dimensional. There is also a notion of "higher spherical functions", which are related to the higher spherical polynomials in the same way as Legendre functions of the second kind are related to Legendre polynomials, i.e., they are the non-polynomial solutions of the same systems of differential equations. If time permits, I will also discuss this and its relation to the theory of holonomic systems.
- 2023/10/11(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:30--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
真鍋 征秀(大阪大学)
‘‘Hurwitz numbers, matrix models and enumerative geometry'' (Bouchard and Marino) の文献紹介
単純フルビッツ数は,コンパクトリーマン面から複素射影直線への写像について,
複素射影直線の1点では任意被覆,それ以外の点では単純被覆であるような
分岐被覆の数え上げを与え,安定曲線のモジュライ空間上のHodge積分としての
表式が知られている(Ekedahl-Lando-Shapiro-VainshteinによるELSV公式).
本セミナーでは,単純フルビッツ数がLambert曲線を入力データとした
Chekhov-Eynard-Orantinの位相的漸化式から得られることを主張した
2007年のBouchardとMarinoの仕事,及び
「フルビッツ数と位相的漸化式」に関連したその後の進展について紹介する.
- 2023/10/11(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
任 鑫 (関西大学)
q-deformed rational numbers, q-deformed Farey sum and a triangulated category of A_2 quiver
Let ¥textit{q} be a positive real number. The left and right ¥textit{q}-deformed rational numbers were introduced by Bapat, Becker and Licata via regular continued fractions, and the right ¥textit{q}-deformed rational number is exactly ¥textit{q}-deformed rational number considered by Morier-Genoud and Ovsienko¥cite{MO1}, when ¥textit{q} is a formal parameter. They gave a homological interpretation for left and right ¥textit{q}-deformed rational numbers ¥cite[Theorems 4.7 and 4.8]{BBL}.
In this talk, we give a formula for computing the ¥textit{q}-deformed Farey sum of the left ¥textit{q}-deformed rational numbers based on the negative continued fractions. We use this formula to give a combinatorial proof of the relationship between the left ¥textit{q}-deformed rational number and the Jones polynomial of the corresponding rational knot which was proved by Bapat, Becker and Licata using a homological technique. We combine the homological interpretation of the left and right ¥textit{q}-deformed rational numbers and the ¥textit{q}-deformed Farey sum, and give a homological interpretation of the ¥textit{q}-deformed Farey sum.
[BBL] Bapat, A., Becker, L., Licata, A. M.: $q$-deformed rational numbers and the $2$-Calabi--Yau category of type $A_2$, Forum Math. Sigma 11 (2023), Paper No. e47, 41 pp.
[MO1] Morier-Genoud, S., Ovsienko, V.: $q$-deformed rationals and $q$-continued fractions, Forum Math. Sigma 8 (2020), Paper No. e13, 55 pp.
[XR2] Ren, X.: On $q$-deformed Farey sum and a homological interpretation of $q$-deformed real quadratic irrational numbers,arXiv:2210.06056, 2022.
- 2023/10/13(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
古場 一(大阪大学)
全空間R3内における線形熱方程式系の時間大域的可解性について
全空間R3を2つの領域に分け, その熱の伝わりを支配する熱方程式系の解の存在性について考える. 界面上で主となる線形作用素項に対して小さくとれない本質的に大きい摂動項が存在するため, その本質的に大きい摂動項を処理する数理的アイデア, 熱核や熱半群, ラプラス作用素の最大正則性を応用して, 初期値H1に対する熱方程式の時間大域的強解の存在性を示す.
- 2023/10/16(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
安田 健彦(大阪大学 理学研究科)
F-blowups of quotient singularities and toric singularities
The F-blowup gives a canonical way to construct a birational transform of a singular variety in positive characteristic. There is also a non-commutative counterpart of this construction. There are several natural questions concerning the F-blowup. Does this blowup give resolution of singularities? If not, does it improve singularities? Is it close to be a resolution of singularities in a certain sense? In this talk, I would like to present some recent results for quotient singularities by finite group scheme actions and for toric singularities in this direction, which were obtained in my joint works with C. Liedtke, E. Chavez-Martinez and D. Duarte.
- 2023/10/16(Mon) 幾何・確率論合同セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)
鈴木 康平 (Durham University)
Curvature behind Interacting Brownian Motions
The Dyson Brownian Motion (DBM) is an eigenvalue process of a particular Hermitian matrix-valued Brownian motion introduced by Freeman Dyson in 1962, which has been one of the central subjects in the random matrix theory. In this talk, we study the DBM from a differential geometric point of view. We show that the infinite particle DBM induces an infinite-dimensional differential geometric structure on the configuration space possessing a lower bound of the Ricci curvature à la Bakry-Émery. As a consequence, we obtain new quantitative estimates of the transition probability of the DBM (e.g., the local spectral gap, the local log-Sobolev, and the dimension-free Harnack inequalities) as well as the characterisation of the DBM as the gradient flow of the Boltzmann entropy in the Wasserstein space.
***今回はハイブリッド形式で行います. 講演の前日までに幾何学メーリスなどにはZoomリンクをお知らせいたします. メーリスに入っていない方で講演を聞きたい方は岩井(masataka"at" math.sci.osaka-u.ac.jp)までお問い合わせ下さい.
- 2023/10/16(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
永野 中行(金沢大学理工研究域)
クンマー曲面族を拡大するK3曲面族とその周期写像から得られる保型形式について
クンマー曲面は特別なK3曲面であり、主偏極アーベル曲面を適切な対合で割ることで得られます。これは非常に簡明な方程式で定義される古くから知られた複素曲面ですが、一般のK3曲面の周期写像の重要な性質を証明する際に活躍しました。更に整数論への応用も多く試みられているなど、重要な数学的対象として知られています。今回は、クンマー曲面の「パートナー」を経由することで、格子偏極K3曲面の観点からクンマー曲面の族を自然に含むようなK3曲面族を構成します。これらのK3曲面の周期写像の逆対応が、整数論で重要な保型形式を自然に与え、多変数のテータ関数や複素鏡映群の不変式と密接に関係することを紹介します。
- 2023/10/18(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
清水達郎(東京電機大学 )
An invariant related to the Chern-Simons perturbation theory
$d(M,\rho)$は3次元閉多様体$M$とその基本群の表現$\rho:\pi_1(M)\to GL(V)$の組に対する位相不変量で,
$\rho$で捻られた局所係数ホモロジー群$H_1(M,V_{\rho}\otimes V_{\rho}^*)$に値を取る.
$d$はChern-Simons摂動論の構成中に自然に現れる量で,Lescopによって初めて定式化された.
$d$はその数理物理的背景から,Reidemeister torsionと関連することが期待される.
実際,表現が可換表現のときには$d$とReidemeister torsionは本質的に一致することが知られている.
本講演では$d$に関して現状分かっていることをいくつかのべる.
特に多様体と表現の貼り合わせに対して(非可換表現であっても)
$d$はReidemeister torsionと同じ公式を満たすことを紹介する.
- 2023/10/20(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
橋詰 雅斗(大阪大学)
2次元H^1制約条件付き変分問題と関連する楕円型方程式の基底状態解の関係について
2次元全空間上で定義されたSobolev空間に関する変分問題を扱う。Sobolev不等式やTrudinger-Moser不等式などを統一的に扱える汎関数での最大化問題において、その最大化関数の性質について考察する。最大化問題を達成する最大化関数はある非局所楕円型方程式の解となることはよく知られているが、さらに最大化関数はこの方程式の基底状態解となることを示す。また、逆は一般には成立しないこと、つまり基底状態解ではあるが最大化関数にはならないような例があることも紹介する。
- 2023/10/23(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
早野 健太(慶應義塾大学大学院理工学研究科)
固有でない関数の安定性
多様体の間の写像を"少し動かしてもその性質が変わらない"とき,その写像は安定であるという.(厳密な定義は講演で与える.)一般に与えられた写像が安定であるかを判定することは容易ではないが,固有な(コンパクト集合の逆像がコンパクトとなる)写像に関しては,Matherにより安定であるための(判定が容易である)必要十分条件が得られている.本講演ではMatherの結果をはじめとする,安定写像に関する先行研究を概観した後,固有とは限らない関数($\mathbb{R}$への写像)が安定であるための十分条件を紹介する.
- 2023/10/25(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
青山昂頌 (大阪大学 理学研究科)
線形空間上の位相構造の束の剛性について
位相体上の線形空間に定まる位相構造全体の集合は束構造を持ち,その中で位相線形空間となる位相構造だけを集めたものも束構造を持つことが知られている.本講演ではこの位相構造全体の束の中に,位相線形空間となる位相全体の束がどのように入っているかという情報が元の位相体や線形空間を決定するという剛性定理や類似の結果を紹介する.証明のアイデアは,ガロア接続によってこれらの束からアフィンや射影幾何の対応を見つけ出すということである.講演ではこの詳細についても触れたい.
- 2023/10/27(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
戍亥 隆恭(大阪大学)
デルタポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式の対称解の閾値における大域ダイナミクス
本講演では, 1次元空間上のデルタポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式について考える. 一般解の中で対応する楕円型方程式に関する最小化問題を考えた場合, 最小エネルギー解は存在しない. 一方で, 偶関数解に制限した最小化問題は一般解における最小化問題よりも真に大きく, 基底状態解(最小エネルギー解)が存在する場合がある. 一般解においては, 最小化問題未満および閾値ちょうどの場合の解の大域挙動は, 散乱か爆発かのいずれかであることが知られている. また偶関数の場合でも最小化問題未満の場合は同様に散乱か爆発しか起こらない. 本講演では偶関数解の場合の最小化問題ちょうどの閾値の場合の大域ダイナミクスの結果について紹介する. 時間が許せばそれらに関連する一連の結果(例えば奇関数の場合や閾値の最適性に関する結果)についても紹介する. 本研究はStephen Gustafson氏(University of British Columbia)との共同研究である.
- 2023/10/27(Fri) 確率論セミナー 17:00--18:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Ismaël Bailleul(University of Brest)
Phi43 measures on compact Riemannian 3-manifolds
I will explain in this talk what are the difficulties one has to bypass to construct the Phi43 measure on a 3-dimensional Riemannian manifold. Its construction provides the first example of a non-perturbative Euclidean/Riemannian quantum field theory in a curved background.
- 2023/10/30(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
杉本 悠太郎(東京大学)
Dynamical degrees of automorphisms of complex simple abelian varieties and Salem numbers
dynamical degree(力学的次数)とは非特異射影多様体の双有理自己写像に対して定まる特徴量であり、1以上の実数値をとる。この特徴量は Salem数や Pisot数と呼ばれる代数的整数との関わりが知られており、これらの代数的整数を dynamical degree として実現する写像についての研究が行われている。講演では主に単純アーベル多様体の自己同型射の dynamical degree を紹介する。(1)アーベル多様体の次元を制限しなければすべての Salem数が実現されること、(2) 1に十分近い first dynamical degree をもつ自己同型射の存在について説明する予定である。
- 2023/10/30(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
成田 知将(名古屋大学)
コンパクトケーラー多様体のラプラシアン固有値の最大化問題
与えられたコンパクト多様体Mにおいて, 体積が1となるようなリーマン計量全体を考える. このとき, 計量から定まるラプラシアンの最小正固有値は, そのような計量全体の上の汎関数とみなせる. Nadirashvili(1996)とEl Soufi-Ilias(2000)は, 計量gがそのような固有値汎関数の臨界点であるとき, ラプラシアンの固有関数たちが(M,g)の球面への等長極小はめ込みを与えることを示した. Apostolov-Jakobson-Kokarev(2015)は, リーマン計量全体ではなく, コンパクトケーラー多様体においてケーラー類を固定して固有値汎関数の臨界点を調べた. 本講演では, コンパクト複素多様体において, 体積が1となるようなケーラー計量全体を考え, 固有値汎関数の臨界点について考察する. Apostolov et al.の結果との比較を行い, また例として複素多様体について述べる. 本講演はプレプリント arXiv:2304.06261の内容に基づく.
- 2023/11/6(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
入江 博(茨城大学理学部)
凸体のMahler体積について
Mahler体積(volume product)とは、Euclid空間の凸体の体積とその極凸体の体積の積であり、当初は数論の研究の中で導入されたものであるが、凸体の集合上の汎関数として凸幾何の分野で古くから研究されてきた。近年、種々の分野の問題との関連が指摘され、その研究が活発になっている。
中心対称な凸体のMahler体積の上からの評価は、Blaschke–Santalo不等式としてよく知られており、凸体が楕円体の場合に限りその最大値をとる。一方、下からの最良評価は、2次元の場合にはMahlerにより1938年に与えられたが、一般次元では未解決で、Mahler予想(1939年)と呼ばれる凸幾何の古典的問題の一つである。本講演では、主要な先行研究を概観した後、柴田将敬氏(名城大学)との共同研究で解決したMahler予想の3次元の場合(2020年)の証明のアイデアを解説する。また、Mahler予想の非対称版の部分的な解決についての最近の結果も紹介したい。
- 2023/11/8(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:30--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
松本 圭峰(大阪大学)
Hochschild homology numberの非可換変形不変性について
compact Kähler manifoldの変形族が与えられた時,そのHodge数は不変であることは古くから知られている.この結果の自然な非可換類似として次の問題を考えることが出来る..
「Aを複素数体上の可換環,TをA-linearなsmooth proper dg-圏とする.この時,Hochschild homology HH_i(T/A)はA上locally freeであるか否か.」
Aが複素数体上滑らかな場合,この問題はGetzlerによって肯定的に解決され,一般の場合は2019年にAkhil Mathewによって肯定的に解決された.
本講演では,非可換代数多様体のhomologicalな不変量の比較定理を用いてAkhil Mathewの結果に別証明を与える.
- 2023/11/8(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
Benjamin Bode(Institute of Mathematical Sciences in Madrid)
Links of non-degenerate polynomials
The links of isolated singularities of complex plane curves are completely characterised. They are certain iterated cables of torus links. Among the set of complex plane curves is a special family of polynomials, called the non-degenerate polynomials, whose links are unions of torus links. In this talk I will discuss an analogue of this setting for real polynomial maps and prove that the set of links of weakly isolated singularities of non-degenerate singularities of real polynomial maps is completely characterised by two symmetry conditions.
- 2023/11/13(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
Juan Francisco Pons Llopis (Politecnico di Torino)
(Generalized) logarithmic sheaves on smooth projective varieties
Given a smooth projective variety X and a divisor D on it, the sheaf of logarithmic differential forms $\Omega^1_X(\mathrm{log} D)$ is defined as the sheaf of one-forms having logarithmic poles along D. The sheaf was studied extensively by Deligne and Saito in connection with Hodge theory. On the other hand, this sheaf, or equivalently its dual sheaf $\mathcal{T}_X(-\mathrm{log} D)$ of vector fields tangent along D, has been investigated from the point of view of stability theory, as well as related to Torelli problems.
The goal of my talk will be twofold: firstly, I am going to resume the state-of-the-art regarding the aforementioned problems. Secondly, I am going to introduce a generalization of $\Omega^1_X(\mathrm{log} D)$ for $X$ a smooth surface that takes into account certain vanishings along a fixed set of points $Z$ on $D$. This is joint work with S.Marchesi, S.Huh and J. Vallès.
- 2023/11/13(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
平良 晃一(立命館大学)
Spectral theory for the d'Alembertian on Lorentzian manifolds
Riemann多様体上のLaplacianのスペクトル(固有値)の研究は数理物理への応用,幾何学との関連性などの観点から多岐に渡り調べられている.近年ではLorentz多様体上のd'Alembertianのスペクトル理論が着目され,場の量子論におけるある物理状態の構成に用いられた他,Kassel-KobayashiによってRiemannの場合には起こらないような現象が発見された.一方で,微分方程式的な観点から見ればd'Alembertianは楕円型ではなく双曲型の作用素であるため非常に扱いが難しく,この研究分野は未だ発展途上である.本講演では,Laplacianのスペクトル理論における既存の研究をいくつか紹介した後に,d'Alembertianのスペクトルの基本的な性質について得られた結果を述べる.
- 2023/11/13(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
辻栄 周平(北海道教育大学旭川校)
符号付きグラフの彩色符号対称関数の対蹠射の公式について
単純グラフの辺 $ij$ に対し,超平面$x_i-x_j=0$を対応させることにより,グラフ配置と呼ばれる超平面配置を得ることができる.グラフに関連するいくつかの概念はグラフ配置を考えることで超平面配置の言葉に翻訳することができる.たとえば,頂点彩色は補空間の格子点に対応し,非輪状な向き付けは部屋(補空間の連結成分)に対応する.とくにグラフの彩色対称関数はグラフ配置の補空間の格子点から得られていると考えることができる.符号付きグラフに対しても超平面配置を対応させ,その補空間の格子点から彩色対称関数の類似物(彩色符号対称関数)を得ることができる.
Humpert と Martin (2011) はグラフホップ代数の対蹠射の公式を非輪状な向き付けの個数を用いて与えた.したがって,対称関数のなすホップ代数における彩色対称関数の対蹠射の公式をグラフ配置の部屋の個数で記述することができる.本講演では符号付きグラフの彩色符号対称関数についても同様な公式が得られることについて紹介する.本研究は日本文理大学の黒田匡迪氏との共同研究に基づく.
- 2023/11/14(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
難波 隆弥(京都産業大学)
Iterates of Bernstein-type operators and some diffusions in population genetics
The Bernstein operator is a positive linear operator on the Banach space
of continuous functions on $[0,1]$,
which is used to show the celebrated Weierstrass approximation theorem
from a probabilistic perspective.
In this talk, we introduce an extension of the Bernstein operator to the
$d$-dimensional cases
and discuss some limit theorems for the iterates of the operator.
As the limit, we capture the $d$-dimensional Wright--Fisher diffusion
with mutation which is well-studied in population genetics.
Some further possible directions of these limit theorems including
infinite-dimensional cases are discussed as well.
Based on a joint work with Takatoshi Hirano.
- 2023/11/15(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:30--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
三浦真人(大阪大学 理学研究科)
Calabi--Yau超曲面の幾何転移とミラー対称性
本講演では、Calabi--Yau多様体の古典的ミラー対称性について手短に解説する。この際、導来同値や幾何転移といったCalabi--Yau多様体の間の関係が、ミラー側でどのように記述されるのかについて、期待されている描像を紹介する。後半では、具体例としてトーリック多様体のCalabi--Yau超曲面の幾何転移とミラー対称性の関係を取り上げ、組み合わせ論から従う結果を紹介する。
- 2023/11/15(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
盛田健彦(大阪大学 理学研究科)
Generalizations of the squared continued fraction transformation
モジュラー曲面は複素上半平面のモジュラー群の作用による商空間であるが,有限面積の双曲Riemann面の一例であると同時に,種数1の複素構造のモジュライ空間でもある.そこで,モジュラー曲面に対して次の2つの一般化を考えてみる.一つ目は,複素上半平面はそのままとして,モジュラー群を一般の余有限Fuchs群に置き換えるというもので,モジュラー曲面は一般の面積有限なRiemann面に置き換わる.もう一つは,複素上半平面を種数1以上のコンパクトRiemann面のTeichmüller空間に,モジュラー群を写像類群に置き換えるというものである.
一方,連分数変換は区分的に1次分数変換で表示された単位区間上の力学系であり,上半平面やモジュラー群との関わりについても,さまざまな観点から研究されてきた.以下では,区分的にFuchs群の元であるほうがより自然であることから,連分数変換そのもよりむしろその2回合成を考える.
以上をふまえて本講演では,連分数変換の2回合成が,無限遠点を付加した実軸上のモジュラー群の作用と軌道同値を与える1次元力学系の‘繰り込み’であることに注目し,上述の2つの一般化それぞれに対して,連分数変換の2回合成がどのような力学系に一般化されるべきかという問題を考える.前者についてはFuchs群に付随するBowen-SeriesのMarkov写像とその‘繰り込み’が自然なものであること,後者については,区間入れ換え変換の空間に作用するRauzy-Veech-Zorich誘導変換とその‘繰り込み’に類する‘力学系’が候補となることについて得られた結果とその背景についての説明を試みたい.
- 2023/11/17(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
松澤 陽介(大阪公立大学)
Preimages question of self-morphisms on projective varieties over number fields
Pulling back an invariant subvariety by a self-morphism on projective variety, you will get a tower of increasing closed subsets. Working over a number field, we expect that the set of rational points (of bounded degree) contained in this increasing subsets eventually stabilizes. I will explain why this expectation seems to be reasonable and introduce several affirmative cases, such as the case of etale morphisms and morphisms on the product of two $P^1$. I will also present some counterexamples that occur when we drop some of the assumptions. This work is based on a joint work with Matt Satriano and Jason Bell, and recent work with Kaoru Sano.
- 2023/11/17(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
三沢 正史(熊本大学)
ソボレフ流の体積エネルギー集中現象について
n次元(nは2以上)有界領域上, 境界値零のソボレフ空間におけるソボレフ不等式の最良定数に関わる体積制限付き極値問題に対する勾配流をソボレフ流と呼ぶ. pラプラス作用素と多孔媒質作用素とが混合した二重非線形放物型方程式の解として定まる. ソボレフ流に対する初期値零境界値問題の正則解が大域存在する. ソボレフ流の時間大域解の無限大での挙動について, いわゆる体積エネルギー集中現象が成立する. 体積エネルギー集中現象においては, ソボレフ流に対する局所有界性評価が重要な役割を果たす. ソボレフ流を記述する二重非線形放物型方程式に特有のスケール変換が, 局所有界性において本質的に重要であり, このスケール変換はまた, 体積集中点での爆発解析のスケール変換と同じオーダーであることを見る. この研究はTuomo Kuusi氏(University of Helsinki, Finland), 中村謙太氏(熊本大学)との共同研究にもとづく.
- 2023/11/20(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
水野 雄貴(早稲田大学)
Some examples of noncommutative projective Calabi-Yau schemes
射影スキームは連接層の圏から復元することができ, さらにその圏は次数付き加群の圏の商圏 qgr として記述することができる. この事情に基づいて Artin-Zhang(1994) は非可換次数付き代数に関して, 非可換射影スキームの理論を構築した.
カラビヤウ多様体は, 代数幾何学や数理物理をはじめとした様々な分野で盛んに研究されている. 非可換射影幾何学の分野では, 射影空間の類似である非可換射影空間などは盛んに研究されているが, それに比べるとカラビヤウ多様体の非可換類似に関する研究はまだまだ少ないように思う. その中でも金沢氏 (2014) は非可換射影空間の超曲面としてカラビヤウ多様体の非可換類似の例を構成した.
講演者は金沢氏の構成をさらに推し進め, 非可換な重み付き射影空間の超曲面と非可換射影空間の直積の完全交差としてそれぞれでカラビヤウ多様体の非可換類似の例を新たに構成した. 本講演ではこの結果について紹介したい.
- 2023/11/20(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Karl-Theodor Sturm(University of Bonn)
Metric Measure Spaces and Distribution-valued Ricci Bounds
We will study metric measure spaces $(X,d,m)$ beyond the scope of spaces with synthetic lower Ricci bounds. In particular, we introduce distribution-valued lower Ricci bounds $BE_1(\kappa,\infty)$;
* for which we prove the equivalence with sharp gradient estimates,
* the class of which will be preserved under time changes with arbitrary $\psi \in Lip_b(X)$, and
* which are satisfied for the Neumann Laplacian on arbitrary semi-convex subsets $Y \subset X$.
In the latter case, the distribution-valued Ricci bound will be given by the signed measure $\kappa= k m_Y + \ell \sigma_{\partial Y}$ where $k$ denotes a variable synthetic lower bound for the Ricci curvature of $X$ and $\ell$ denotes a lower bound for the "curvature of the boundary" of $Y$, defined in purely metric terms.
- 2023/11/21(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
三上 敏夫(津田塾大学)
コスト関数がノルムの高々2次の増大度をもつ場合の確率最適輸送問題について
コスト関数がノルムの高々2次の増大度をもつ場合に、
初期終期分布で定まる確率最適輸送問題の値関数の以下のことに関する講演者の最近の研究を紹介する。
(1)有限であるための必要十分条件
(2)上・下からの評価
(3)短時間・長時間挙動
- 2023/11/22(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:30--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
白石勇貴(大阪大学)
Burban-DrozdとLekili-Polishchukの解説
Burban-Drozdのnodal特異点で繋がっている(一般には軌道体)射影直線の鎖の
非可換特異点解消と,そのミラーとなる境界に点付き曲面のホモロジー的ミラー対称性を示した
Lekili-Polishchukの論文(の一部)について解説します.二回の解説の内,一回目では,
射影直線の鎖の正規化の構造層と特異点のイデアル層を使ってsmooth properな箙代数(gentle代数)を
構成するBurban-Drozdの論文(の一部)を解説します.二回目ではそのgentle代数を実現する
境界に点付き曲面を構成し,ホモロジー的ミラー対称性を示したLekili-Polishchukの論文(の一部)を
解説します.特に,「お絵描き」と導来圏における各種操作が両立的であることを説明したいと思います.
- 2023/11/22(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
Emily Roff (University of Edinburgh/Osaka University)
Reachability homology and the magnitude-path spectral sequence
The magnitude homology of a metric space and the path homology of a directed graph have each been the subject of a prolific literature over the past decade or so. The two theories have quite different origin stories; nonetheless, it was established by Asao in 2022 that in fact they are closely related [1]. To any directed graph one can associate a spectral sequence whose $E^1$ page is exactly its magnitude homology, while its path homology can be identified with an axis of page $E^2$. This talk will discuss ongoing work to draw out the consequences of Asao's observation. I will describe the target object of the magnitude-path spectral sequence---the reachability homology of a directed graph---and in doing so connect all three homology theories to the classical homotopy theory of small categories. If time permits, I will also examine the bigraded variant of path homology that comes from considering the entire $E^2$ term. This turns out to be a strictly finer invariant than ordinary path homology, while sharing its good properties of homotopy invariance, a Künneth formula, and a Mayer--Vietoris sequence.
This is work in progress, joint with Richard Hepworth (University of Aberdeen).
Reference:
[1] Y. Asao. Magnitude homology and path homology. Bulletin of the LMS, 55(1):357–398, 2023
- 2023/11/27(Mon) 談話会(集中講義の第1回を兼ねる) 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
富安 亮子(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
葉序の機構によるパッキングの一般曲面・一般次元への拡張
回転体の表面に一様に密なパッキングを生成する方法として黄金角の機構が知られている。これを一般曲面および一般次元に拡張したので紹介する。得られるパッキング密度は曲面で0.7, 3次元で0.
38程度の厳密値による下限値を持ち、等面積性を有する曲面・空間のメッシュ生成に利用できる。用いた代数の理論はMarkoff理論と数の幾何のproduct of linear formsであるが、簡約基底の話におき直すことで最適な格子がfixできる。他に、R^nの格子をn次元リーマン多様体上に写す格子写像が必要だが、そのような格子写像が存在する必要十分条件は、リーマン計量が対角化可能、すなわち座標変換によりg = \sum gii dxi^2かつ行列式det gが定数という性質が成立することである。一般曲面(smoothを仮定)では、2階の準線形偏微分方程式をsymmetric hyperbolic systemに帰着する標準的な方法で格子写像の存在が示せる。ここまで、多様体上で局所的なパターン生成が可能という話である。大域的なパターン生成を行うには、異なる座標系で生成されたパターン(格子の像)を滑らかにつなげる方法が必要になる。Vogel spiralというよく知られるR^2の事例でどのようにこの点を処理しているか紹介する。
講演者の立ち位置を述べておくと、問題の性質上幾何・解析に踏み込むことは避けられないが、代数・数論の応用に動機がある。
- 2023/12/1(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
土屋 卓也(愛媛大学/大阪大学MMDS)
楕円型方程式の境界値問題に対するアダマール変分について
楕円型方程式の境界値問題が、ある領域で定義されている状況を考える。このとき、領域が摂動を受けると、方程式により定まる様々な量(例えば境界値問題のグリーン関数、固有値など)も変動する。そのような領域の摂動に関する変分を、アダマール変分という。講演者(土屋)は、大阪大学の鈴木貴教授とともに、様々なアダマール変分の計算を行ってきた。この講演では、
1. ディリクレ/ノイマン境界条件の元でのラプラシアンのポアソン問題のグリーン
関数のアダマール変分
2. ラプラシアンの固有値のアダマール変分 -- 領域摂動に関する固有値の連続性と微分可能性
などについて、我々の研究の結果を紹介する。
- 2023/12/4(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom) For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
後藤 倫(大阪大学 理学研究科)
射影直線上の力学系の乗数写像
代数多様体X上の自己射φについて、φ^n(p) = pを満たす点pにおける微分写像d(φ^n)_p∈End(T_p X)の固有値たちは乗数スペクトルと呼ばれる、φの(時間離散)力学系としての挙動を決める不変量である。力学系たちのなすモジュライ空間を考えたときに、その各点に対しその点が表わす自己射の乗数スペクトルを与える写像を乗数写像と呼ぶ。
特にXが射影直線の場合、McMullenにより与えられた一般の自己射と同じ乗数スペクトルを持つ力学系は共役を除き高々有限個であること、すなわち乗数写像はgenerically finiteであることが示され、その後共役を除くと自身のみであること、すなわち乗数写像はgenerically injectiveであるかどうかが問われた。これはSilverman-Milnorにより2次射のときに示されていたが、3次射の場合を発表者が示し、最近4次以上の場合についてJi-Xieによる解決が発表された。
この発表では、乗数写像の不変式論的な取り扱いと、それを用いた3次射の場合の証明について述べる。また、力学系を射影直線上の自己対応へと一般化した際の乗数写像の性質についても触れる。
- 2023/12/4(Mon) 談話会 17:00--18:00 南部陽一郎ホール
Tom Leinster(The University of Edinburgh)
The many faces of magnitude
The magnitude of a square matrix is the sum of all the entries of its inverse. This strange definition, suitably used, enables us to define the "magnitude" of many objects in different contexts across mathematics. All of them can be understood as measures of size. For example, the magnitude of a metric space combines classical quantities such volume, surface area, and dimension. The magnitude of a category is closely related to Euler characteristic. The magnitude of a graph is an invariant sharing features with the Tutte polynomial (but not a specialization of it). Magnitude also appears in the difficult problem of quantifying biological diversity: under certain circumstances, the greatest possible diversity of an ecosystem is exactly its magnitude. And there is now a theory of magnitude homology, which has the same relationship to magnitude as ordinary homology does to Euler characteristic. I will give an aerial view of this landscape.
- 2023/12/6(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:30--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
白石勇貴(大阪大学)
Burban-DrozdとLekili-Polishchukの解説(2回目)
Burban-Drozdのnodal特異点で繋がっている(一般には軌道体)射影直線の鎖の
非可換特異点解消と,そのミラーとなる境界に点付き曲面のホモロジー的ミラー対称性を示した
Lekili-Polishchukの論文(の一部)について解説します.二回の解説の内,一回目では,
射影直線の鎖の正規化の構造層と特異点のイデアル層を使ってsmooth properな箙代数(gentle代数)を
構成するBurban-Drozdの論文(の一部)を解説します.二回目ではそのgentle代数を実現する
境界に点付き曲面を構成し,ホモロジー的ミラー対称性を示したLekili-Polishchukの論文(の一部)を
解説します.特に,「お絵描き」と導来圏における各種操作が両立的であることを説明したいと思います.
- 2023/12/8(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E404/406/408 大セミナー室
熱田 真大(津田塾大学)
テイトモチーフの局所同変玉河数予想とその応用について
局所同変玉河数予想とは、 L 関数の関数等式に現れる root number と局所ガロアコホモロジーの精密な関係を主張する予想であり、いくつかの定式化が知られている。本講演では、古典的な Coleman map の理論を用いて、テイトモチーフの局所同変玉河数予想を、明示的な補間公式を満たすような形で部分的に再証明を与える。さらに、応用として Deligne--Ribet の p 進 L 関数を用いて、明示的に L 関数の特殊値と結びつく高階 Euler 系が構成できることも、時間が許す限りお話ししたい。本研究は片岡武典氏(東京理科大学)と臺信直人氏(慶應義塾大学)との共同研究である。
- 2023/12/8(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
北村 駿介(東北大学)
増大する重み付き半線形波動方程式の解の瞬間爆発と今後の展望について
本講演では, 非線形項に空間変数の重みを持つ一次元半線形波動方程式の, 非コンパクトな台を持つ初期値に対する初期値問題の時間局所解について考察する. 減衰重みの場合はWakasa(2017)において, 十分小さな初期値に対して有界性や可積分性の条件を加えて時間局所解の存在とその最大存在時間の評価が得られている. 一方, 重みが増大する場合は空間遠方における解の値を制御できなくなる. このような状況では時間局所解の存在すら困難であると予想でき, 実際その予想の補強として, Kurokawa-Takamura(2003)では空間重みの無い2次元以上の半線形波動方程式の初期値が動径方向無限遠で発散する場合において, いかなる時間局所解も存在しないことが示されている. 本講演では時間局所解の非存在を解の瞬間爆発と定義し, 解が瞬間爆発する初期値の条件とその条件の最適性について得られた結果と, 時間局所解が存在する場合のその最大存在時間の評価, 及び今後の展望を紹介する.
- 2023/12/11(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E404およびZoom)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
原 和平(IPMU)
Conjectures on 3-dimensional NCCRs and MMAs
NCCR(非可換クレパント解消)はVan den Berghによって定義されたクレパント特異点解消の類似を与える非可換代数である.MMAは伊山-Wemyssによって定義されたNCCRの特異点を許す一般化であり,非可換極小モデル($\mathbb{Q}$-factorial terminalisation) に相当すると考えられる概念である.NCCRやMMA,可換なクレパント解消や極小モデルには,その存在や導来同値,モジュライ問題をはじめとするさまざまな問題が提起されている.本講演ではNCCRやMMAについてこれまで提起されている問題や予想を整理しつつ,以下の結果を紹介する.(1) 次元に関わらず,特異点解消が非可換代数と導来同値になるとき,被約ファイバーに現れる射影多様体の奇数次のBetti cohomologyは消滅する.(2) 特に3次元Gorenstein標準特異点でクレパント特異点解消を持つがNCCRは持たない例が存在する.(3) 3次元Gorenstein標準特異点でMMAを持つが,MMAと極小モデルが導来同値にならない例が存在する.(2)や(3)に関しては,特異点を定義する具体的な方程式やresolutionの取り方も紹介する.本講演の内容は全て進行中のMichael Wemyss氏との共同研究に基づきます.
- 2023/12/11(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
小川 智史(大阪公立大学)
コンパクト複素曲線の正則管状近傍について
Gong—Stolovitchはコンパクト部分複素多様体近傍に正則管状近傍が存在する十分条件を、あるチェックコバウンダリ写像の作用素ノルムを用いて定式化した。この発表では、非特異複素曲面に法線束がユニタリ平坦となるよう埋め込まれたコンパクト複素曲線の近傍について、Gong—Stolovitchの与えた十分条件を見る。その結果として、Arnol'dの正則管状近傍定理を含んだ結果と、そこにBrjuno条件が現れることを紹介する。
- 2023/12/12(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
永幡 幸生(新潟大学)
Zero range process のスペクトルギャップに関して
Zero range processは粒子系のモデルとして典型的なものである。
スペクトルギャップの評価があると、KPZ方程式が導出できるなど多くの結果があるが、
一方でいくつかの例を除いて評価がない。今回の話では既存研究をいかにして拡張するかを与え、 その適用例を挙げる。
- 2023/12/13(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:30--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
佐野太郎(神戸大学)
Calabi-Yau超曲面の双有理有界性について
Calabi-Yau多様体は代数多様体の分類において重要な対象であるが未知の部分が多く、例えば次元を固定した時の位相型の有限性は知られていない。
本講演では、滑らかな多様体の既約な超曲面として現れるCalabi-Yau多様体の(双有理)有界性について、超曲面が2次元の時を中心に話す。
正規交差Calabi-Yau多様体の変形理論、およびその応用としてのCalabi-Yau多様体の具体例の構成との関係についても話す予定である。
- 2023/12/13(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
野崎 雄太(横浜国立大学 環境情報研究院)
ホモロジーシリンダーの非可換 Reidemeister-Turaev トーション
ホモロジーシリンダーとは,ホモロジー的に曲面と区間の直積であるような3次元多様体であり,写像類群の部分群である Torelli 群と深く関係する.本講演では,ホモロジーシリンダーに対して,曲面の基本群の群環の $I$ 進完備化の代数的 $K_1$ 群に値を持つ Reidemeister-Turaev トーションを定義し,その性質を紹介する.具体的には,量子トポロジーの文脈で現れる有限型不変量になっていることを示し,さらに LMO 関手や榎本-佐藤トレースとの関係を明らかにする.本講演は佐藤正寿氏(東京電機大学)と鈴木正明氏(明治大学)との共同研究に基づく.
- 2023/12/18(Mon) 談話会 17:00--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
武田 秀一郎(大阪大学 理学研究科)
From local Langlands to relative local Langlands
In the first part of the talk, I will explain basics of the local Langlands correspondence, which are, roughly speaking, correspondences between representations of a reductive group over a local field and finite dimensional representations of the Galois group of the local field. In the second part, I will explain the relative version of it, which has to do with distinguished representations of the reductive group, and will describe its recent developments.
- 2023/12/19(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
濱名 裕治(筑波大学)
ブラウン運動の球面への到達時刻と到達位置について
ブラウン運動の球面への到達時刻については,ベッセル過程の到達時刻の研究から
確率分布が得られている. 到達時刻とその時のブラウン運動の位置の同時分布については,
出発点が球の内側にある場合と外側にある場合が個別に研究されているが,
ブラウン運動の斜積変換を用いることで統一的に取り扱いができることを述べる.
さらに,Ornstein-Uhlenbeck 過程の到達時刻とそのときの位置に
ついても同時密度関数が得られることを示す.これらの結果は,
松本裕行氏との共同研究により得られたものである.
- 2023/12/20(Wed) トポロジーセミナー 17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室
Alexandru Suciu (Northeastern University)
On the topology and combinatorics of decomposable arrangements
A complex hyperplane arrangement $\mathcal{A}$
is said to be decomposable if there are no elements in the
degree 3 part of its holonomy Lie algebra besides
those coming from the rank 2 flats. When this purely
combinatorial condition is satisfied, it is known that
the associated graded Lie algebra of the arrangement
group $G$ decomposes (in degrees greater than 1)
as a direct product of free Lie algebras, and all the
nilpotent quotients of $G$ are combinatorially determined.
We show here that the Alexander invariant of $G$ also
decomposes as a direct sum of "local" invariants.
Consequently, the degree 1 cohomology jump loci
of the complement of $\mathcal{A}$ have only local
components, and the algebraic monodromy of the
Milnor fibration is trivial in degree 1.
- 2023/12/22(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
川上 隼平(京都大学)
部分的な調和振動子を伴う非線形シュレディンガー方程式の平均化モデルの諸性質
本講演では空間に関して部分的に調和ポテンシャルを含む非線形シュレディンガー方程式の平均化モデルを考察する。線形項に調和振動子を伴いべき乗型の非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式に対して、その解の様相を解析するために両者の相互作用による共鳴成分を抽出した近似方程式がしばしば用いられてきた。本講演ではこの近似方程式に着目し、その一般化といえる平均化モデルについてこれまで得られた結果を報告する。
- 2024/1/12(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部b342/344/346(いつもと部屋が違います)
堀永 周司(NTT基礎数学研究所)
large discrete series を生成する次数 2 のジーゲル保型形式の尖点成分について
ラングランズの理論を通じ, 保型形式全体の空間は尖点成分の同値類に沿って分解される. その分解を正則ジーゲル保型形式において考え直すと, クリンゲンアイゼンシュタイン級数が正則ジーゲル保型形式の空間を張ることにおおよそ言い換えられる. 本講演では, 次数 2 のジーゲル保型形式であって large discrete series を生成するものを考える. それらの尖点成分を決定し, 尖点形式に直交する保型形式がどのようなアイゼンシュタイン級数より張られるかを議論する. 本研究は早稲田大学成田宏秋氏との共同研究である.
- 2024/1/15(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00
若林 泰央(大阪大学 情報科学研究科)
Opers with real monodromy and Eichler-Shimura isomorphism
本講演では,Riemann面上の射影構造やその一般化であるoperと呼ばれる接続付き主束のモジュライ空間について最近考えたことを話します.
とくに,モジュライ空間の離散性(Faltingsの定理)やEichler-Shimura同型,そしてそれらを拡張することによって定式化されるある種のTorelli型問題などに触れる予定です.本講演は論文arXiv:2309.12203の内容に基づいています.
- 2024/1/15(Mon) 談話会 17:00--18:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
世良 透(大阪大学 理学研究科)
間欠力学系の逆正弦法則に関連する大偏差評価
非一様拡大的で中立不動点(微分係数1の不動点)を持つ区間写像について,その反復作用による力学系を間欠力学系と呼ぶ.間欠力学系に適当な初期分布を与えたとき,逆正弦法則など様々な分布極限定理が成り立つことが知られている.そしてこれらの極限定理は更新過程や一次元拡散過程に現れるものと類似している.以上を踏まえて,本講演では間欠力学系の逆正弦法則に関連する大偏差評価について述べる.なお本講演での大偏差評価はいわゆる指数減衰ではなく,多項式減衰を表す評価である.
- 2024/1/16(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
星野 壮登(大阪大学)
Random models on regularity-integrability structures
In the study of singular SPDEs, it has been a challenging problem to obtain a simple proof of a general probabilistic convergence result (BPHZ theorem). Differently from Chandra and Hairer's Feynman diagram approach, Linares, Otto, Tempelmayr, and Tsatsoulis recently proposed an inductive proof based on the spectral gap inequality by using their multiindex language. Inspired by their approach, Hairer and Steele also obtained an inductive proof by using the regularity structure language. In this talk, we introduce an extension of the regularity structure including integrability exponents and provide a simpler proof of BPHZ theorem.
This talk is based on a joint work with Ismael Bailleul (Université de Bretagne Occidentale).
- 2024/1/19(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
清水 扇丈(京都大学)
Free boundary problems for the incompressible Navier-Stokes equations in time $L^1$ setting
Time-dependent free surface problems for the incompressible Navier-Stokes equations which describes the motion of viscous incompressible fluid whose initial boundary is given by the graph of a function are considered. We obtain global well-posedness of the problem for small initial data in scale invariant critical Besov spaces. Our proof is based on maximal $L^1$-regularity of the corresponding Stokes problem in the half-space and special structures of the quasi-linear term appearing from the Lagrangian transform of the coordinate. This is a joint work with Takayoshi Ogawa (Tohoku University).
- 2024/1/22(Mon) 阪大代数幾何学セミナー 10:30--12:00 ハイブリッド(理学部E301およびZoom)(注意:教室がE404室からE301室に変更となりました)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
狩野 隼輔(東北大学 数理科学共創社会センター)
Entropy of cluster DT transformations and the finite-tame-wild trichotomy for acyclic quivers
箙の変異ループのうち、特別な性質を満たすものとしてクラスターDonaldson--Thomas(以下DT)変換と呼ばれるものがある。これはKontsevich--Soibelmanの箙の非可換DT不変量を与えることからこのように呼ばれている。非輪状箙Qに対してはクラスターDT変換は具体的な与え方が知られており、認容列(admissible sequence)とも呼ばれ、QのCoxeter変換と密接な関係がある。
一方で講演者は石橋典氏との共同研究で曲面の写像類の擬Anosov性の類似として変異ループの符号安定性を導入し、エントロピーの計算や、擬Anosov写像類の符号安定性による特徴付けなどを行ってきた。
今回は、非輪状箙の道代数の表現論から定まる有限表現型、tame表現型、wild表現型という分類の、クラスターDT変換の符号安定性による特徴付けやエントロピーについて、石橋典氏との共同研究の最近の進展について報告する。
- 2024/1/22(Mon) 幾何セミナー 13:30--15:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
林 晋(青山学院大学)
Index theory for quarter-plane Toeplitz operators via extended symbols
Index theory for Toeplitz operators on a discrete quarter-plane has been investigated by Simonenko, Douglas-Howe, Park, and index formulas are obtained by Coburn-Douglas-Singer, Duduchava. In this talk, we consider such operators of two-variable rational matrix function symbols and revisit Duduchava’s idea to use Gohberg-Krein’s theory for factorizations of matrix-valued functions from a geometric viewpoint. We see that, through matrix factorizations and analytic continuations, the symbols of Fredholm quarter-plane Toeplitz operators defined originally on a two-dimensional torus can canonically be extended to some three-sphere. Their Fredholm indices coincide with the three-dimensional winding number of extended symbols, which is proved by using K-theory.
- 2024/1/24(Wed) 大阪大学ミラー対称性セミナー 15:30--17:00 E316
菊田康平(大阪大学 理学研究科)
Autoequivalence groups of K3 surfaces and Compactifications of spaces of stability conditions
ホモロジー的ミラー対称性を通して,K3曲面の導来圏の自己同値群と実曲面の写像類群の間に興味深い類似が見られる.様々な側面からこの類似を捉えることができるが,本講演ではTeichmüller空間の類似物である安定性条件の空間に着目する.これは群作用を用いて自己同値群を調べる上でも重要な空間である.特にK3曲面の安定性条件の空間の(部分)コンパクト化について,最近の発展の一部を解説したい.本講演は小関直紀氏,大内元気氏との共同研究に基づく.
- 2024/1/26(Fri) 微分方程式セミナー 15:30--17:00 理学部 E301/302/303 大セミナー室
小薗 英雄(早稲田大学/東北大学)
Liouville type theorem on the Taylor-Couette-Poiseuille flow
We consider the stationary Navier-Stokes equations in the region of two concentric rotating cylinders. We first show that if the Reynolds number is sufficiently small and if the flow is axi-symmetric with its $L^\infty$-norm small, then it is necessarily the Taylor-Couette-Poiseuille flow. Furthermore, if the associated pressure is bounded in the vertical direction, in particular, periodic in $z$-axis, then it coincides with the canonical Taylor-Couette flow. Next, we give certain bounds of the Reynolds number and the $L^\infty$-norm of the velocity vector under which the fluid motion is necessarily axi-symmetric. This implies that the control of the Reynolds number and the bound of the velocity yield the unique laminar flow. On the other hand, from a viewpoint of PDE, our result gives the Liouville-type theorem around the non-trivial solution. This is based on the joint work with Profs. Yutaka Terasawa(Nagoya Univ.) and Yuta Wakasugi(Hiroshima Univ.).
- 2024/1/29(Mon) 大阪大学幾何学・代数幾何学合同セミナー 13:30--15:00 ハイブリッド(理学部E301およびZoom)(いつもとセミナー室が異なることにご注意下さい)For more information, please contact handai.agseminar@gmail.com by Friday (We might ignore non-academic e-mail address).
服部 真史(京都大学)
Positivity of the CM line bundle and specially K-stable varieties
Fujiki-Schumacher shows that a moduli space parametrizing projective manifolds with a constant scalar curvature metric admits an ample line bundle that is so-called the CM line bundle, which was named by Paul-Tian. As an algebro-geometric counterpart, Odaka conjectured that one can construct moduli space of K-polystable varieties and the CM line bundle of this moduli is ample. Recently, his conjecture was completely solved for the Fano case. In this talk, I will discuss the positivity of the CM line bundle for specially K-stable case. I will also explain the application to projectivity of all proper subspaces of the moduli space parametrizing ``K-stable" Calabi-Yau fibrations over curves, which was constructed by Hashizume and I.
- 2024/1/30(Tue) 確率論セミナー 16:30--18:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
盛田 健彦(大阪大学)
Ad hoc Banach algebras associated with generating partitions of piecewise expanding systems
単位区間上の区分的単調写像の転送作用素に関連する研究の黎明期には変換の生成分割から定まる関数空間を利用しようとする,
ある意味で '場当たり的' ともいえる試みがあった.
例えば,Y. Takahashi, "Fredholm determinant of unimodal linear map" Sci. Paper College Gen. Ed. Univ. Tokyo 31 (1981) 61--87 などが典型であろう.
その後,古典的な有界変動関数全体などの一つ関数空間を考える方向で理論は進化し,こちらの方法が主流となっていったように思われる.
今回は,あえて,時代をさかのぼって,個々の区分的拡大変換の生成分割をもとに
'場当たり的'Banach代数を構成するという発展の方向をたどった場合の話をさせていただきたいと思う.
- 2024/2/2(Fri) 整数論保型形式セミナー 13:30--14:30 理学部 E301/302/303 大セミナー室
Brandon Williams(RWTH Aachen University)
Modular products that are singular modulo primes
Kikuta, Kodama and Nagaoka proved that almost all Fourier coefficients of the Siegel cusp form of degree two and weight 35 are divisible by the prime p=23. We will show that similar congruences hold for the Fourier coefficients of many reflective Borcherds products on O(n, 2). This is joint work with Haowu Wang.
- 2024/3/12(Tue) 談話会 16:00--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
盛田 健彦(大阪大学 理学研究科)
エルゴード理論における転送作用素の方法
- 2024/3/27(Wed) 談話会 16:00--17:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室
Jonq Juang(National Yang-Ming Chiao-Tung University)
A Novel Discrete Time and Discrete State Cucker-Smale Model
The study of flocking motion has found widespread applications in fields such as biology, ecology, robotics, control theory, sensor networks, sociology, and economics. The most celebrated model in this multidisciplinary area is given by Cucker and Smale (which is referred to as the C-S model hereafter). In this talk, we will begin by briefly reviewing the C-S model and its extensions. Motivated by the fact that every computer is a finite automation, we next address a C-S model that is discrete in both time and state.