阪大力学系・フラクタルセミナー
平成28年度
4月27日(水) 場所: 豊中キャンパス理学部棟5階D505, 時間:16:30ー18:00

講演者: 鈴木新太郎 氏(大阪大学大学院理学研究科数学専攻)

ランダムβ-変換の不変密度関数

ランダムβ-変換は, β-変換をある区間上 自然に拡張した写像(greedy map)と, greedy mapの図を180度回転した図から得られる写像(lazy map) を用いて定義されるランダム力学系である. 本講演ではランダムβ-変換の解説を行うとともに, ランダムβ-変換の不変密度関数が, 変換による1の軌道を用いて表されることについて 説明する.


6月22日(水) 場所: 豊中キャンパス理学部棟D505, 時間:16:30ー18:00

講演者: Mariusz Urbanski 氏 (University of North Texas, USA)

Random Countable Alphabet Conformal Iterated Function Systems with the Transversality Condition

Dealing with countable (finite and infinite alike) alphabet random conformal iterated function systems with overlaps, I will formulate appropriate Transversality Conditions and then discuss the relevant in such context, Moran-Bowen's formula, which determines the value of the Hausdorff dimension of random limit sets in dynamical terms. The proof of this formula will be based on the potential-theoretic characterization of Hausdorff dimension. I will also provide quite large classes of examples of such random systems satisfying the Transversality Condition.


7月20日(水) 場所: 豊中キャンパス理学部棟D505, 時間:16:30ー18:00

講演者: 梶野直孝氏(神戸大学大学院理学研究科数学専攻)

Apollonian gasket上のLaplacianとそのWeyl型固有値漸近挙動

どの2つも互いに接しているような3円で囲まれた平面内の閉領域(理想3角形) を考えると,最初の3円全てに接する円でこの閉領域内に含まれるものが唯1つ 存在することが古代ギリシアのApollonius ofPerga (262--190 BC) 以来よく 知られている.この内接円の内部を最初の理想3角形から取り除き,残った 理想3角形に対しても同様にその内接円の内部を取り除く操作を無限に 繰り返したときに最後に残る点全体の集合はApollonian gasketと呼ばれ, その構成から容易に分かるようにいわゆる(普通の)Sierpinski gasketと 同相なフラクタル集合である.この集合はある古典的なKlein群の極限集合 (の一部)としても自然に現れることが知られており,フラクタル幾何学, 力学系,Klein群論等の多様な観点からよく研究されている. 本講演では,Teplyaev (2004) により構成されたApollonian gasket上の 「標準的な」Laplacianについて,計算可能な具体的表現を与え,さらに Weyl型固有値漸近挙動を示した,という講演者の最近の結果を紹介する. 固有値漸近挙動の証明に使われる議論はKestenの更新定理 [Ann. Probab. 2 (1974)] に基づくエルゴード理論的側面の強いもので あり,この議論はまたKlein群の作用で不変な円の詰め込みにおける円 の漸近分布についてのOh and Shah [Invent. Math., 2012] の結果の (Apollonian gasketの場合に限っての)別証明をも与えている. 時間が許せばこの議論の基本的なアイデアの説明も講演の最後に行う.


11月9日(水)場所: 大阪大学吹田キャンパス 情報科学研究科C棟2階C201, 時間: 17:00-18:30

講演者:和田昌昭氏(大阪大学大学院情報科学研究科)

反復関数系から見た穴開きトーラス群

穴開きトーラス群は常に位数2の対称性を持ち, (2,2,2,∞)オービフォルド群を指数2の拡張として持つ. フックス型(2,2,2,∞)オービフォルド群の 生成元P,Q,Rの定義域をうまく選ぶと, P,Q,Rは |f(x)-f(y)|≦|x-y| という意味での縮小写像となり, フックス群の極限集合である円周をP,Q,Rが 生成する反復関数系の極限集合と見ることができる. これをクライン群の穴開きトーラス群の場合に拡張したい. また,合わせて,5月に公開したOPTi 4を紹介する.


1月11日(水) 場所:大阪大学吹田キャンパス 情報科学研究科C棟2階C201 時間: 17:00-18:30

講演者: 茶碗谷毅氏(大阪大学大学院情報科学研究科)

準周期外力を受ける2次写像における『SNA』と  その吸引域の構造について

非自律的な力学系はしばしば 自律系の振る舞いからの直観的な予想を 裏切るような複雑さを示す。 いくつかの準周期(多重周期)外力系で 観測されているSNA (strange non-chaotic attractors) の出現はその端的な例の一つである。 SNAがみられる系の一つである 準周期外力を受けるロジスティック写像系では、 SNAの発生が、トーラスのフラクタル化といわれる 非自律系に特有なタイプの分岐を通して起こる場合が あることが知られている。 今回のセミナーではこの系の状態変数を 複素数に拡張したときに、 フラクタル化に伴って現れる興味深い現象、 とくにアトラクター(SNA)の吸引域の 複雑な構造等について、 数値計算でえられた図等を交えて紹介する。


1月18日(水)場所: 大阪大学豊中キャンパス理学部棟5階D505 時間: 17:00−18:30

講演者: 伊縫寛治氏(大阪大学大学院基礎工学研究科)

Sierpinski gasket上のエネルギー密度関数の不連続性

N次元Sierpinski gasketは, 理想的な自己相似性を持つフラクタル図形の典型例である. この集合上におけるエネルギー密度関数 (エネルギー測度のRadon--Nikodym導関数)の性質について論じる. Bell, Ho, and Strichartz [Energy measures of harmonic functions on the Sierpinski gasket,Indiana Univ. Math. J. 63 (2014), 831--868]は, 2次元Sierpinski gasket上の エネルギー測度の局所的な挙動を調べることにより, その密度関数が到るところ不連続であることを示した. 本講演ではこれらの結果をN次元Sierpinski gasketの場合に 一般化した結果を紹介する.

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