阪大力学系・フラクタルセミナー
平成25年度
第1回:3月11日(月) 場所: 豊中キャンパス 理学部 D 棟 505 セミナー室, 時間:13:30ー14:30

大谷充也 氏 (Universitat Erlangen-Nurnberg, Germany)

Bifurcation and Hausdorff dimension in families of chaotically driven maps with multiplicative forcing (joint work with Gerhard Keller)

一次元の状態空間を持つあるカオス型のスキュープロダクト力学系に ストレンジアトラクタグラフが現れる事が知られている。 これらが滑らかに分岐する様子がマルチフラクタル解析により説明される。 今回紹介する現象は、原点を通る凸関数の不動点の個数が 原点での微分係数に依り一つだったり二つだったりする現象と、 本質的には同じものである。 つまり原点でのリャプノフ指数が分岐の状態を決定をしているので、 このリャプノフ指数のレベル集合を解析することになる。


第2回:5月15日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 D 棟 505 セミナー室, 時間:16:30ー18:00

下村健吾 氏 (大阪大学大学院 情報科学研究科)

overlapするシェルピンスキーガスケットのHausdorff次元について

反復関数系は距離空間上の縮小変換族で定義され, その極限集合は一般にフラクタル集合となることが多い. そして極限集合のHausdorff次元は反復関数系に開集合条件 を仮定した場合求める事ができる事が分かっている. 本講演ではこの開集合条件を仮定しないoverlapする反復関数系の極限集合のHausdor ff次元について極限集合の点がどれだけoverlapされているのかを表す 重複度関数を使って評価する.overlapする反復関数系の極限集合として overlapするシェルピンスキーガスケットを例にとって話す。


第3回:6月19日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 D 棟 505 セミナー室, 時間:16:30ー18:00

和田 昌昭 氏 (大阪大学)

重み付きグラフおよび対称可積分関数に対する安定カット理論の試み

集合Xにおいて,非負で対称な関数w:X×X→Rが与えられているとする.このとき,X のwに関する「自然な分割」を考えたい.この講演では,筆者の試みを紹介する.

X(=V)が有限集合の場合には,重み付きグラフG=(V,w)を考えることになる.Gのカッ トC=(A,B)とは, A∪B=V, A∩B=φとなる部分集合の組のことである.カットCによって分離されるすべ ての辺eの重みの和Σw(e)をカットの重みとよぶ.カットCにおいて頂点v∈Vを分割の もう一方の側に移す操作を頂点スライドとよび,カットCに対する任意の頂点スライ ドによって重みが増えるときCは安定であるという.より正確な定義は講演中に述べ る.この安定カットの概念が「自然な分割」に対する筆者の答である.

(φ,V)と(V,φ)は明らかに安定なカットであるが,これらを自明なカットとよぶ.講 演では,重み付きグラフに対する「ミニマックス横断カット重み」という不変量を導 入し,それを用いて非自明な安定カットが存在するための十分条件を与える.

Xが無限集合の場合に上と類似の理論を展開しようとすると,Xや関数wに対する何ら かの制限が必要になる.まだ未完成であるが,(X,μ)が可測空間,w:X×X→Rが可積 分関数である場合の試みを合わせて紹介する.


第4回:7月24日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 D 棟 505 セミナー室, 時間:16:30ー18:00

角 大輝 氏 (大阪大学)

オーバーラップを許す有理半群・等角反復関数系の ジュリア集合・極限集合のハウスドルフ次元

リーマン球面上の有限個の有理写像で生成された、 写像の合成を積とする半群(有理半群とよぶ)の力学系と リーマン球面上の等角反復関数系を考える。 有理半群の研究はランダム複素力学系に深く関係し、 等角反復関数系はフラクタル幾何学・解析学の主要な研究対象である。 双曲性の仮定のもと、いわゆる「開集合条件」と呼ばれる条件が満たされると、 有理半群のジュリア集合(カオス的部分)・等角反復関数系の極限集合 のハウスドルフ次元は 「圧力関数」の零点となる(Bowenの公式という)ことが知られている。 (ちなみに相似縮小写像の反復関数系では圧力関数の零点は 相似次元とよばれる。) 開集合条件とは、ジュリア集合・極限集合のなかのミニチュアたちが 互いにあまり交わらない、という条件であるが、 この講演では、開集合条件を仮定せず、 双曲的有理半群・縮小的等角反復関数系の族に対して、 「横断性条件」と呼ばれる条件が満たされれば、 ほとんどすべてのパラメータについて、 対応する有理半群・反復関数系のジュリア集合・極限集合の 次元は、

(1)圧力関数の零点と2の小さい方と一致する、

(2)圧力関数の零点が2より大きい場合は、ジュリア集合・ 極限集合の2次元ルベーグ測度は正となり、システムの ある種の不変測度が2次元ルベーグ測度に絶対連続になる

ということを示す。例外的パラメータの集合のハウスドルフ次元の評価も与える。 適用例として、

(A) 有限生成多項式半群$G$で、 ジュリア集合での生成元の微分の絶対値が2より大きい場合は、 $G$を少し摂動した場合、ほとんどすべてのパラメータで ジュリア集合のハウスドルフ次元は圧力関数の零点と2の小さい方と一致する。

(B) $\{ z^{2}, az^{2}\} $(ただし$|a|\neq 0,1$) の小さい摂動で生成された2元生成有理半群のジュリア集合は ほとんどすべてのパラメータで 2次元ルベーグ測度が正となる。

(C)シルピンスキーガスケットを作るシステムの小さい摂動(ただし縮小率1/2を 複素数の範囲で小さく摂動する)については、ほとんどすべてのパラメータで 極限集合のハウスドルフ次元は圧力関数の零点(相似次元)と一致する。

を示す。本研究の半分はM. Urbanski (Univ. of North Texas)との共同研究である。

参考文献:H. Sumi and M. Urbanski, Transversality family of expanding rational semigroups, Adv. Math. 234 (2013) 697--734.


第5回:11月20日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 D 棟 505 セミナー室, 時間:16:30ー18:00

Rich Stankewitz 氏 (Ball State University)

Dynamics of Mobius Semigroups and the Chaos Game

We study the dynamics of semigroups of Mobius transformations on the Riemann sphere, focusing on the topology of the invariant structures that these systems generate, namely, their Fatou and Julia sets and attractors. We highlight the natural connections between the dynamics of rational functions, rational semigroups, random iteration, and Mobius groups, as well as illustrate their differences with examples. Motivated by a specific class of examples (Caruso Semigroups) exhibiting attractor-like behavior when playing the Chaos Game, we determine exactly when (thick) attractors exist, in general, for finitely generated Mobius semigroups. We also explore several other facets of Mobius semigroups drawing concrete examples from the Caruso semigroups when possible.


平成26年度
第6回:2014年1月29日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 E棟 301セミナー室, 時間:16:30ー18:00
(いつもと場所が異なります! 理学部棟E棟へは、1階部分からお入りください。 2階以上のところからの出入りは、現在改修工事のために出来ません),

Johannes Jaerisch 氏 (大阪大学)

Dynamics of infinitely generated rational semigroups and multifractal formalism for random complex dynamical systems

We consider the dynamics of possibly infinitely generated semigroups of rational maps on the Riemann sphere. We introduce nicely expanding rational semigroups and prove a version of Bowen's formula for the Hausdorff dimension of the pre-Julia set which will be introduced likewise. We give applications to non-hyperbolic rational semigroups by employing the method of inducing. Time permitting, we also discuss an application of the multifractal formalism to the (i.i.d.) random dynamics of rational maps on the Riemann sphere. The results are based on a joint work with Hiroki Sumi.