第17回(2009年度)整数論サマースクール
「l進ガロア表現とガロア変形の整数論」
- 概要
- 時期: 2009年8月17日(月)から8月21日(金)まで
登録制合宿型のサマースクール
- 場所:
アピカルイン京都
- 目的
l進ガロア表現の基礎理論への導入と発展的な話題の俯瞰
- 開催趣旨
Serreの研究やGrothendieckのl-進エタールコホモロジー
によって幾何的な対象からガロア表現が機械的に構成され,
数論幾何学の大事な対象として研究されるようになった.
さらに,Wilesの志村-谷山予想の証明でガロア表現の変形が脚光を浴びて以来,
l-進ガロア表現やその変形は重要度を増してきている.
ただ, その大事さにかかわらずガロア表現の考え方はまだまだ多くの人に
伝わっていないこともあるのではないだろうか.
本サマースクールの前半ではガロア表現の基本的な文法や価値観を整理すると
同時に,ガロア表現とその変形に関する基本的なインフラを丁寧に説明しより
多くの人にガロア表現の考え方が広まることをひとつの目的としたい.
それと同時にこの分野で研究を行う
人々にも刺激的な交流の場であることを目指したい.
より発展的な内容として, WilesのFermat予想から最近のセール予想の解決等の
話題にも軽くふれたのち, 特にガロア表現の変形が秘める現在の発展的な
話題の流れを見極め, Eigencurveの話を含めたガロア表現
の変形空間における面白い研究の方向性や未解決の問題などに
光をあてたい.
- 参加対象
原則として数学系の大学院に属する学生および大学・高専等の数学教員
- 講演予定者
今井直毅, 落合理, 佐々木秀, 佐藤周友,
千田雅隆, 冨山恭敬, 中村健太郎, 三枝洋一, 安田正大,
山上敦士, 山内卓也, 吉田輝義 (並びは50音順)
- 参加者のための予備知識および基本文献
本サマースクールでは、基礎編の部分をしっかり理解
していただくくとともに、発展編においても少しでも深い理解を
していただきたいと思います。
そのために、若い方や少し分野の異なる方は次の事柄で
不慣れなものがあればまず復習および予習をされておかれることを
推奨します(以下のリストはもちろん基礎編の十分な理解を「保証」する
ものではありません. 可能ならば後で述べるより発展的な予習が
あるとよいかもしれません)
1. 無限次拡大の場合も含めたガロア理論 (Krull位相, 有限体のガロア拡大の
構造, 有理数体の円分拡大及び円分多項式の既約性)
2. ごく初歩の楕円曲線(シルバーマン-テイト著「楕円曲線論入門」等の内容.
楕円曲線の定義や有理点. 楕円曲線のテイト加群や等分点で得られるガロア表現)
3. ごく初歩のモジュラー形式 (J.P セール著「数論講義」
にあるレベル1のモジュラー形式の理論程度, 例えば、「ヘッケ作用素」や
「ヘッケ環」などもわかっていると望ましい. また「q-展開」とは何かなど)
4. p-進体や付値環の定義と基本性質 (森田康夫著「整数論」の特に4章から6
章, Witt環の定義など)
5. 分岐の概念や分岐群、イデアル類群など代数的整数論の基本事項
6. 類体論に関する簡単な理解 (加藤-斎藤-黒川著 「数論〈1〉Fermatの夢と類
体論」等の内容)
7. 圏や函手、逆極限と順極限、複体やコホモロジー完全列などのホモロジー代数の基
本事項 (河田 敬義著「ホモロジー代数」などに含まれる内容(の一部))
8. フェルマー予想や佐藤-Tate予想とは何かに関する簡単な知識
9. (できれば)代数幾何学に関する若干の素養
上の内容に余裕のあるレベルの人はよりもう少し発展した内容を準備されれば
より理解の助けになるかと思います.
例えば以下のような内容を把握しておくとよいかもしれません
1. 楕円曲線のより深い理解 (J. Silverman著「The Arithmetic of Elliptic
Curves」等の内容. 有限体上や局所体上の楕円曲線の一般論. 特に楕円曲線のgood
reduction, bad reduction及びそのガロア表現による判定条件, 楕円曲線の
半安定還元定理やTate curveなど. 数体上定義された楕円曲線のゼータ函数)
2. モジュラー形式のより深い基礎(レベル一般のモジュラー形式の定義.
「newform」の理論)
3. 局所体やガロアコホモロジーについて (斎藤秀司著「整数論」など)
4. モジュラー曲線やモジュラー形式の代数幾何的な取扱い
- 全体のプログラム(場合によっては時刻、タイトル等の変更の可能性も
あることをご了承ください)
8/17(月)
10:00-12:00 プレサマースクール (落合理)
12:30-13:50 参加受付
14:00-15:45 ガロア表現の基礎I (山内卓也)
16:15-18:00 ガロア表現の基礎II (千田雅隆)
20:00-21:30 エタールコホモロジーとl進表現I (三枝洋一)
8/18(火)
9:30-11:30 ガロアコホモロジー (佐藤周友)
13:30-15:30 ガロア表現の変形理論入門 (今井直毅)
16:00-18:00 モジュラー形式に付随したガロア表現 (吉田輝義)
20:00-21:30 エタールコホモロジーとl進表現II (三枝洋一)
8/19(水)
9:00-10:45 p-進表現入門I (中村健太郎)
11:15-13:00 p-進表現入門II (中村健太郎)
14:30-16:00 無限個の素点で分岐するガロア表現 (冨山恭敬)
16:30-18:00 院生・ポスドクの時間(小関祥康、杉山 倫、鈴木貴士、
並川健一、宮坂宥憲、吉田学)
18:30- 懇親会
8/20(木)
9:30-12:00 モジュラリティ予想概説 (吉田輝義)
13:45-15:45 セール予想概説 (安田正大)
16:15-18:15 肥田理論概説 (落合理)
20:00- 来年度以降のサマースクールについて討論
8/21(金)
9:00-11:30 コールマンによるモジュラー形式のp進変形理論 (佐々木秀)
13:00-15:30 Eigencurveについて (山上敦士)
15:30 終了
- 申込等について
5月1日より参加登録を
専用登録サイトで開始しました。参加登録締切は
5月31日となっていますが、先着で80人に達し次第
登録を打ち切ります。(その後、宿泊等増やして対処してきましたが
参加人数が講義室の最大許容人数の100人に達したので
参加登録を完全にうちきらせていただきました)
尚、全日程参加での参加費(宿泊および食事)は職のある研究者および
旅費滞在費が支給される学生の方は4万円台、私費で参加される
学生の方は3万円台を予定しています。
- 宿泊その他の補足情報
初日前夜の宿泊について
初日(月・8/17)の前日(日・8/16)の晩の宿泊はこちらでは手配はしません。
また、8/16は五山送り火のため京都では宿泊を探しにくいかと思われます。
ネットなどを利用してはやめに手配をされることをおすすめいたします。
宿泊探しの手助けとして、公共宿泊機関を含めた
宿泊先と電話番号(のみ)のリストも
ご参照ください。
ホテル設備について
ホテルでは無線LAN有線LANを含めインターネット接続のサービスがありません。
ご了承ください。
講演会場は100人用の広い部屋となっております。
必要な方は簡易オペラグラス等を準備されるとよいかもしれません。
- 本サマースクールは以下の研究費によって援助を受けています
若手研究(S): 志村多様体を核とした数論幾何学,ガロア表現,保型表現の総合的研究
(課題番号:20674001) 代表者:伊藤哲史
基盤研究(A): 多変数保型形式の算術的構造と跡公式の明示的研究
(課題番号:21244001) 代表者: 伊吹山 知義
基盤研究(B): 非可換岩澤理論とその周辺
(課題番号:20340006) 代表者: 加藤 和也
基盤研究(B): アーベル多様体のモジュライ空間の整数環上の大域的研究
(課題番号:20340001) 代表者: 中村 郁
基盤研究(A): 数論・幾何の新展開:数論的トポロジー、圏論的数論幾何、アル
ゴリ
ズム (課題番号:19204002) 代表者: 松本 眞
- サマースクール世話人:
- 落合理(大阪大学)
千田雅隆(京都大学)
山内卓也(大阪府立大学)